DISH 「春と訣別と咲乱」


日本人らしいロックとは。


ある人はエレファントカシマシだと言うだろうし、あるいは BLANKEY JET CITY と言う人もいるだろうし、 NUMBER GIRLゆらゆら帝国、その他諸々例を挙げればキリがありませんが、大体において共通しているものは真っ直ぐな武骨さと滲み出る色気、それらが入り混じって光り出す渋味、のようなものだと思います。その味はこのバンドからも発せられています。ジャンル的にはヴィジュアル系に当たるわけですが、ラフにささくれ立ったオルタナティブ (時にシューゲイザーサウンドはこの界隈では珍しいもの。常にシリアスな切迫感とナイーブな翳りを帯びて、喉を擦り切らせて叫ぶその様にはロックの持つロマンチシズムが満ちています。


壮大なスケール感で轟音と逃避願望が響き渡る 「箱船」 、ディスコビートが洗練ではなく妖艶ないかがわしさを振り撒く 「SNOW EMOTION」 、そして 「サミダレイン」 以降の疾走曲畳み掛けなど、ライブを意識したドライブ感であったり、エモーションを剥き出しにした歌唱には惹き込まれる場面が多いです。ヴォーカルは吉井和哉と高野哲が憑依したところに怨念注入したようなネチっこさで、これは好みを分ける所でしょうが聴き手にインパクトを与えるという意味では確実にロック的。 「ナミダレイン」 などは正しく絶唱といった感じで、ひりつくような痛みと共に説得力が感じられます。


メンバー2人という編成やジャケットから受けるイメージを大きく裏切られているのですが、ダークな淫靡さとともに生々しく刹那的に感情を吐き出す、そのリアリティに思わず唸らされました。 モノクロームに色褪せた寂寥と強く吹き付ける冬風のようなギターサウンドヴィジュアル系に留まらず王道的なロックの路線上にあるものだと思うし、きっと多くの人に引っ掻き傷を残す内容ではないかなと思います。


2007年結成の2人組による初フルレンス。


Rating: 8.5/10