Doldrums 「Lesser Evil」

Lesser Evil

Lesser Evil


子供の遊び場。


エレクトロニクスという至高のおもちゃを手に入れて、やりたい放題に音を弄り遊んだ楽曲群。イントロを抜けての 「Anomaly」 はウィッチ・ハウス風のミステリアスで冷たいサウンドスケープを展開した、かと思えば 「She is the Wave feat. Guy Dallas」 は最近隆盛を誇る EDM をチープな音像で孫引きしたような曲だし、タイトル通りエキゾチックな雰囲気を微妙に醸し出す 「Egypt」 は Gang Gang Dance を思い出したり、アトモスフェリックなノイズ音をコラージュした 「Lost in Everyone」 は This Heat あたりが憑りついたよう。新旧様々なエレクトロ・サウンドの影響を受け、それらを乱雑なままで吐き出した、ある種のカオスが広がっています。


そして今作の主要素はタイトル曲 「Lesser Evil」 に凝縮されてるような気もします。高らかなヴォーカルが響いては不可解なリズムが切り込み、拡散するシンセ類は全ての視界を遮る濃霧みたいで、プログレッシブな曲展開とともに聴き手を迷宮の中に誘い込むかのよう。これは計算され尽くしたインテリジェンスと言うよりも、やはり無邪気で気まぐれ、自由奔放な落書きといった方がしっくりくる。本当に天然だとしたらちょっと凄いなこれ。


冷たくダークな空気感と、ヴォーカルを立ててキッチュでポップな質感を残してる、という点は辛うじて全編共通しています。しかしそれでも無軌道に音が飛び交ったり、ヴァラエティに富み過ぎの曲調が意地の悪い含み笑いを持って聴き手を翻弄する。 遊び心満載のクセの強い内容に仕上がっていて飲み下すには少々時間がかかりそうですが、妙に意識を惹きつける魅力があるのも確か。 Grimes や Crystal Castles に共通する部分が多くあるとも思いましたが、よく考えれば Grimes とかみんなカナダ出身なんですね。何か変な磁場でも生まれているのだろうか。


カナダ出身、 Airick Woodhead によるソロユニットのデビュー作。


Rating: 7.8/10