きのこ帝国 「eureka」

eureka

eureka


最初バンド名を見た時は当然のようにゆらゆら帝国とキノコホテルを思い出し、どんだけ中村宗一郎好きなんだとツッコミ入れたくなるある種の微笑ましさがありましたけども。


鬱屈、不安、あるいは諦観といったマイナスの感情を冷たいナイフのようにして鋭く突き刺すヴォーカル。スペーシーからソリッド、シューゲイザーからオルタナティブまで様々なギターロックのエッセンスを咀嚼したアンサンブルの中、何処かあどけなさの残るヴォーカルは虚ろな目をしたまま、美しさに憧れたり、自己嫌悪のスパイラルに陥ったりしながら漂う。その歌には文系らしい繊細さがありつつ、自らの内を曝け出す静かな叫びに満ちており、エモーションの奔流が深く渦を巻いています。


不穏なギターノイズが轟く中で静かに言葉を紡ぐ 「夜鷹」 は何だか祈りのような清らかさを裏腹に感じ、急に身も蓋もなく 「なんか全部めんどくせえ」 と声を荒げる 「春と修羅」 は橘いずみが憑依したみたい。 「ユーリカ」 では破裂するギターサウンドと荒々しいグルーヴが一触即発の緊張感を生み出し、 「ミュージシャン」 ではその緊張がポストロックの爆音で熱となり、空高く放出される。曲毎に様々なアプローチを試みながらも、感情のアウトプットという点では常に一貫しており、闇から光をもがきながら目指すような、強さと脆さを同時に感じます。


文系鬱型ギターロックバンドということなら Syrup16gART-SCHOOL の系譜にあるのかもしれませんが、個人的には初期 BUGY CRAXONEfra-foa などに近い匂いを感じました。手に負えなくなった獣のような青い衝動を、自らのスタイルでどうにか歌にする、その生々しさが前述のバンド達に繋がってる気がして。その感性の鋭さは最近の若手の中では少し異質のものだと思います。サウンドの緻密さが感情の微妙な揺れに繋がった音響ギター独白集。


2007年結成の4人組による初フルレンス。


Rating: 7.9/10