Atoms for Peace 「Amok」

Amok

Amok


嵐が来る。


シャープで神経質なエレクトロビートは、昨今のポスト・ダブステップ要素を取り入れつつアフロビート的な躍動感を見せる場面もあり、 Thom Yorke のヴォーカルはいつものように優しく穏やか。しかしそれらを包む空気感は一貫して冷徹です。ラップトップ内で作成したフレーズの断片をネタにバンドでアイディアを広げていったとのことですが、トムのソロ 「The Eraser」 や Radiohead 「The King of Limbs」 に通じる所が多くありつつ、さらに洗練され、無機質に研ぎ澄まされた印象を受けます。歌メロがアブストラクトになってバンドサウンドの一部と化し、空間的サウンド志向になったというか。


あまり Talking Heads 詳しくないけど Talking Heads ぽいと思った 「Before Your Very Eyes...」 に始まり、水中を漂うような軽やかな浮遊感が広がる 「Default」 、今作中最もダークな、息の詰まるほどの緊張感が漲る 「Unless」 、複雑骨折したような奇怪なダンスグルーヴ、そこに美しさも介入する 「Judge, Jury and Executioner」 など9曲。聴き手に強く内省を迫る冷たさ、静けさが常に裏側に潜んでいて、それは何だか来たるべき嵐の予感のよう。


散りばめられたビートの破片は弾けるシナプスのように複雑に入り組んでいて、踊らせるよりも身体を凍てつかせる実験性の方が前面に出ていますが、きっとこれがメンバー自身にはパッショネイトで肉感的なものなのだろうし、きっとその本質はライブで証明されることでしょう。数年前のフジロックでのパフォーマンスは 「The Eraser」 の音世界を拡張し、冷たさが麻痺して次第に熱さに変わっていく、新たな一面を見せた素晴らしいものでしたから。現場でどれだけ化けるか想像するのが面白い作品でもあります。


Thom Yorke 、Flea らを擁する5人組の初フルレンス。


Rating: 7.1/10