How to destroy angels_ 「Welcome Oblivion」

WELCOME OBLIVION

WELCOME OBLIVION


しかし格好良いバンド名だなあとしみじみ思う。


何故かと言いますと Kill ではなくて Destroy だから。そこには血の通った生身を荒々しくぶった切るのではなく、外科手術で分解/解体して修復不可能にしてしまう感じの理知的な悪意が感じられて、それが中身のサウンドにもマッチしてるなと思って。あーはい中二中二。音的にはやはり Nine Inch Nails と大きな差異はないインダストリアルサウンドですが、繊細な女性ヴォーカルに合わせてか音の方もあからさまなアグレッションは少なく、内向きのダークネスが肥大化して聴き手を取り込んでしまう感じ。トリップホップにも通じる陰鬱なムードに、もう少し肉体性が注入された微妙なバランス。


また前作の EP ではトレント御大の趣味の延長線上のようなこじんまりしたイメージがあったのですが、今回は正式な一発目ということで全体に強い緊張感が張り詰めており、空気の密度が増した印象を受けます。研ぎ澄まされたエレクトロニクスは硬質な弾丸のように一打一打が確実にヒットしてくる。 「Keep it Together」 や表題曲 「Welcome Oblivion」 などはその引き締まったヘヴィネスが醸し出す殺気で窒息しそうになるほど。その一方で 「Ice Age」 や 「How Long?」 では何処かミステリアスで異国的な、風通しの良さをいくらか感じることが出来て、アルバムの中で面白いアクセントになってると思います。


しかし最近また NIN の方も復活したとかで、こちらとの差別化は…出来てるような出来てないような。もはやヴォーカルの違いによる雰囲気、色味が唯一の差異という気もします。どうせ本隊が復活するならこっちではもっと冒険しても良いんじゃないかと。良くも悪くも従来のトレント御大の個性が変わらないままであることを再確認できるアルバムではあります。


Trent Reznor を中心とする4人組の初フルレンス。


Rating: 6.9/10