The XX 「Coexist」

Coexist [輸入盤CD](YT080CD)

Coexist [輸入盤CD](YT080CD)


なんて寂しい顔をした音だこと。


音的には前作とほとんど変わっていませんが、さらに音数や抑揚が抑えられたビターな仕上がりになってると思います。ポロポロと爪弾かれる単音のエレキギターと、簡素なエレクトロのリズム、淡々とした男女ヴォーカル。あとちょっとした装飾がたまに入るくらいの、贅肉どころか皮や骨まで殺ぎ落としたような極々シンプルな音。しかしギターの音は自然なリバーブが施され、歌声はかすかに揺れる。それが音の隙間に深い空気感を産み出し、静かな雰囲気の中からディープな感情の機微が浮かび上がってきます。


「私たちはもっと近くにいれた」 「まるで他人のように振る舞った」 。歌詞の中にはこんな風に、心がうまく通じ合わなくなってしまったふたりが多く現れます。まるで斜陽の差し込む散らかった狭い部屋で、お互いが佇みながらその果てしない距離を確認し合うように、訥々と音が、歌が紡がれる。きっとこれ以上修復せず、それでもふたりが同じ部屋に共存 (Coexist) してるというのは、ああなんて悲劇的な。そしてこの心地良いモノクロの感傷は、この隙間だらけの無機質な音だからこそ、逆説的にエモーショナルに響いてきます。


下手したら前作以上に取っ掛かりに乏しい玄人向けの内容かもしれません。ただ以前フジロックで見た時は諦めや憂鬱が憎しみに擦り替わったような、冷たく突き刺さるナイフのような鋭さを持って音が迫ってきました。今回の楽曲もライブになるとサバトめいた鬼気迫る表情を持って迫ってくるのでしょうかね。感情をやや制御しきれなくなった 「Missing」 あたりは一層凄みを増して響きそう。現場で化けそうな余白を目いっぱい残した作品とも言えます。


3年ぶりとなる2作目。


Rating: 7.0/10