BOOM BOOM SATELLITES 「EMBRACE」

EMBRACE(初回生産限定盤)(CD+DVD+USB)

EMBRACE(初回生産限定盤)(CD+DVD+USB)


今回からようやく今年の新譜について書いていきます。改めてよろしくお願いします。


前作 「TO THE LOVELESS」 はそれまでのブンサテの集大成といった印象を受けましたが、今作もその延長線上。身体を突き上げるデジタルビートがあり、空間を埋め尽くす緻密なギターサウンドがあり、扇情的なアグレッションと聴き手を圧倒する重厚さが混在しています。ただ、今作では相変わらずの緻密さがありつつも、幾分がアレンジやエディットがシンプルになり、音全体の風通しが良くなって即効性が増しているように思います。特にリズム面において、小難しさが抜けたぶん鳴らす音のスケール感が広がり、意識が外に向かったポジティブなムードを感じます。


完全にブンサテ流ダンスロックへと変貌した The Beatles 「HELTER SKELTER」 カヴァー、タイトル通り雪景色の優しさや美しさを映し出した 「SNOW」 、 Prodigy ばりのヘヴィビートが波打っては牙を剥く 「DISCONNECTED」 、もはや Sigur Ros などポストロックへの領域へと突っ込んだ聖性溢れるタイトル曲 「EMBRACE」 、そして軽やかに鮮やかに未来へと歩を進める 「NINE」 など10曲。オルタナティブなロック感や高速ビートの力強さは何処を切ってもブンサテ。しかし決してマンネリには陥らず、アルバム全体のムードはあくまでも視線を前に向けた明るさに入れ替えられています。地に足の着いた真摯な明るさ。ゆえに時にはヘヴィにもなるという。特にラストの 「EMBRACE」 〜 「NINE」 の流れにはベタながら感動してしまいました。


そして、川島道行が癌に罹ってたことは全く知りませんでした。アルバムのインターバルが空いてた期間にその手術/リハビリを行っていたとしたならば、なんて強い人なんだろうと驚くばかりです。それを踏まえた上での新作タイトルが 「EMBRACE (抱擁、受容)」 というのはあまりにもドラマチックな…あまり深く詮索はしたくないですけども。とにかく、彼らの個性が全く損なわれていない、力強い一歩を見せた快作です。


2年8ヶ月ぶりとなる8作目。


Rating: 8.4/10