Public Image Ltd. 「This Is PiL」

This Is Pil , from UK)

This Is Pil , from UK)


またテキトーなタイトルだなー。


昨年のサマソニで見たときは殺気も凄みも失せて普通に面白いオッサンと化していた John Lydon ですが、ここでは PiL が本来どういうグループであったかを再確認し、今現在の嗜好とテンションで上手く纏めた、確かに PiL 以外の何物でもないサウンドになっていると思います。這い回るベースを軸にストイックなグルーヴをループさせるリズム隊、そこに被さるダブ処理満載のギター/ヴォーカル。井戸の底の暗闇を見るかのような空虚と、閉所恐怖症的なダークネス。今作ではそこに80年代的な湿っぽいメロウ感も忍ばせ、辛辣な実験精神を通過した上での PiL 流歌モノが並んでいます。


正直俺は最初の3枚くらいしか聴いてないポーザーなのでアレですが、後期 PiL ってだいたいこんな感じの音楽性だったんですかね。捉えどころのないダークな雰囲気が全編を支配しながらも、メロディのおかげで存外に聴きやすいという。それは多くの初期 PiL ファンからは失望されたようですが、完全後追いの上にほとんど脳内バイアスのかかってない俺は 「これはこれで良いんと違うかな」 という印象。 「Terra-Gate」 なんかは普通にロックしてて PiL と Sex Pistols 期のストレートな攻撃性が掛け合わされてる!とか安易に言ってしまいそう。一方で陰気臭く緊張感のある 「Human」 「It Said That」 などは現在形ポジパンのようで味わい深い。


しかし John Lydon の声は不思議な魅力がありますね。高らかに朗々と歌うだけでも何処かしら毒があり、挑発的、あるいは呪術的といった印象に繋がる個性的な声。音楽性や精神性ももちろんながら、この声や歌も PiL にとって必須ファクターであり、 PiL イコール John Lydon をそのまま映し出す表現体だという認識を改めて強くしたのでした。


約10年ぶりとなる復活1作目。


Rating: 7.2/10