cocklobin 「Iris」

[Iris]

[Iris]


ひょっとしてにぐにぐがフルレンス出すのってこれが初?


昨今のヴィジュアル系におけるスタンダードということで硬質なメタル・アグレッション、デス声といった重装備を身につけてはいますが、そういった流行を取り入れても没個性に陥ることなく、他バンドとの差異を感じられる内容になっていると思います。 nigu の伸びやかで澄んだハイトーンヴォイスは健在。切なさと妖しさが入り混じるメロディを靡くように歌い上げ、楽曲における主役としてしっかり魅力を放っています。またサウンド面でも多彩なギターサウンドやリズムの展開などで絶妙な緩急をつけたり、インタールードをマメに挟むなどして中弛みさせない作り。 babysitter 時代に比べると良くも悪くも随分洗練された感はありますが、妖艶なムードとダークな緊張感が交錯する作風自体にはブレはなく、頼もしく感じます。表題曲 「Iris」 や 「月虹」 のようなメロディアスな楽曲は特にツボ。


ただ…これは 9GOATS BLACK OUT とかにも言えることだと思うんですが、メタルっぽくしない方がもっと本来の個性が生きるんじゃないか?という。別にメタル自体が悪いとは言わないし、 Versailles摩天楼オペラのようにポリシーと愛着を持ってメタルをガッツリ演ってるバンドはむしろ好みです。ただ今現在の若手V系シーンって猫も杓子もメタルサウンドを取り入れてるような状態で、どっかで聴いたことある音色、どっかで聴いたことあるリフに溢れた飽和状態に達してると思うんです。昔のような所謂ジャリバンはほとんどいなくなって技術や音質は段違いに向上したけど、達者な技巧ばかりが先行して、メタル的である部分にあまり必要性を感じない。変に勉強熱心な優等生ばかりになってしまったなという。


彼らの場合はアレンジの細部に仕掛けを施したりして、まだ健闘してると思います。ただ (本人達の意図はわかりませんが) そういった流行を端々で気にしてる、囚われてしまってるような節がある。中途半端とまでは言わないけど、彼らなら手垢のつきまくった手法を完全に拭って、もっと独自の表現が出来るだろうという思いが残ります。まだポテンシャルを秘めてるバンドだと思うので、今後に期待したいです。


2008年結成の5人組による、初のフルレンス。


Rating: 6.9/10