Teengirl Fantasy 「Tracer」

Tracer [解説付 / 国内盤仕様] (BRRS1208)

Tracer [解説付 / 国内盤仕様] (BRRS1208)


またふわふわした名前つけてからに。


ここ数年の様々な流行を汲みつつ、幻想的なポップネスを組み立てることに腐心したテクノサウンドであります。ダブステップやウィッチハウスなどの内省的なダークネスを息深く吸い込み、80年代ニューロマ的なライトな煌びやかさや、 R&B ポップの流線型にブラッシュアップされたフォルム、そういったポップスへの架け橋となるフィルターを通した、敷居の低さと奥の深さを兼ね備えたサウンド。程良いインテリジェントな前衛性が楽曲を引っ張るスリルとなって、仄暗い景色の中に水彩の色を咲かせるように音が散りばめられていきます。


ゲスト陣は多彩。 R&B 要素によってアルバムの窓口を開かれたものにしてる Kelera 参加 「EFX」 、やっぱりサイケ色が強くなる Panda Bear 参加 「Pyjama」 、微妙に音数が増えてキッチュになってる気がする Laurel Halo 参加 「Mist of Time」 、そして急にディスコティックな刹那的スウィートネスが弾ける 「Do It」 では Romanthony 参加…あーこれ 「One More Time」 の人か!どおりで妙に聴いたことある声だと思った。各ゲストの個性がモロに反映されてますけども、それはサウンドが弱いのではなく相性が綺麗に合致してるということ。全体の構成を起伏豊かにして楽しませてくれます。最後の 「Timeline」 はベタにハウス/トランスの高揚感がミックスされていて尚良い。


微妙に作風は違うけど、個人的には Gold Panda あたりと似たような匂いを感じます。それはとても甘美な匂い。様々なテクノサウンドのエッセンスを取り込みながらも基盤はポップにあって、ひどく夢見がちで、フィジカルな快楽も程良くあり、という感じの痒い所に手がよく届く音。10代の女子はきっとこんな風に喜びや悲しみを纏いながら夢を見て、未来のことなんて何も分からないままにその夢の世界で戯れているんだわ。そういう意味で非常に男根主義的な作品と言えるでしょう (あちゃー) 。


イギリス出身の2人組による、2年ぶり2作目。


Rating: 7.7/10