SUICIDE ALI 「Tainted Gallery」

Tainted Gallery

Tainted Gallery


「現実と空想の間に位置する第三世界ファイフィルシーアに混在する様々な物語 「SUICIDE ALI」 を完成させるための旅に出る4人」 という設定らしい…なんだよ第三世界って!良い!良いよ君たち!


音的には効果的にシンセを混ぜつつ、ヘヴィかつグルーヴィな音を聴かせるタイプですが、昨今の若手によくあるシャープで洗練されたメタリックサウンドには非ず。土煙に塗れたいなたくて生々しさのある、おそらく90年代中期〜後期あたりによく見られた類のヘヴィサウンド。ミッドロウの音域から発する刺々しさ、ザクザクと肉感的に刺さる音作りはなかなかツボ。個人的には Lamiel や Poisonous Doll など思い出したのですがどうでしょうか。あとメロディの端々から微妙に Pierrot や MERRY など思わせる節もあったり。


音的にはそういったヘヴィネスが基盤としてあるのですが、密室的な閉塞感ではなく何処かエキゾチックな雰囲気を漂わせながら、シリアスなメロディを朗々と歌う楽曲群はディープでありつつ広く開かれた独自のサウンドスケープを形成しています。セピアに色褪せたファンタジックな世界観はバンドの設定からも窺えるように陶酔度バリバリで、荒涼とした哀愁にダークな毒を織り交ぜて自然と浸らせてくれる。シンセの使い方など一歩間違えればベタにサイバーチックな質感になるものなのに、あくまで異国情緒のムードに落とし込んでるのは彼らのセンスが現れてますね。


ラストに据えられた7分超の大曲 「行商人の絵画」 はそういった彼らの方向性を深く煮詰めた、最も聴き応えのある内容になってると思います。砂塵のように吹き荒ぶアンサンブルの向こう側にこの世ならざる世界をあなたは幻視できるでしょうか。先人達の影響を受けながらも独自のサウンドを構築しようという気概に満ちた、これから先にも期待を抱かせる作品だと思います。


3年ぶりとなるフルレンス2作目。


Rating: 7.6/10