V.A. 「dip TRIBUTE 9 Faces」


ギターオタクはギターオタクに好かれる。


その時々で好んで聴いてたものの影響をダイレクトに反映させて、でもギターロック好きという核の部分は変わらずに、しなやかなに作風を移ろわせながらマイペースに活動を続けている dip 、というかヤマジカズヒデ。世間の流行り廃りとは切り離されたところで気ままに音を鳴らし、それが一定の評価を得てるというのはバンドマンにとってひとつの理想の姿ではないかなと思ったり。今回のトリビュートに参加した面々もそういったヤマジのスタイルにシンパシーを感じてるのかもしれません。ジャキジャキにささくれたラウドサウンドも、フォーキーなアコースティックも、幻惑的なサイケデリアも、ここにはあります。


音の荒さとは裏腹に弛緩したノリで不敵な笑みを浮かべる MO’SOME TONEBENDER 「TIME ACID NO CRY AIR」 、やはり彼らが演ると彼らにしかならない POLYSICSSUPER LOVERS IN THE SUN」 、緻密で閉塞的な空気の中に寂寥が染み渡る THE NOVEMBERS 「HUMAN FLOW」 、ピアノの美しさが高い熱を孕んで空高く舞い上がるような近藤智洋13階段への荒野」 、狂おしいアコギの音色が無常感を纏って響く木下理樹 「NO MAN BREAK」 、おそらく趣味の根幹に位置してるであろう激シブフォークロックなヤマジカズヒデ 「GARDEN」 セルフカヴァーなど全9曲。


以前にヤマジのソロワークスを聴いたことがあるのですが、そこで見せたシンプルでメロウな歌の数々は彼の素の姿、 dip とはその歌をバンドサウンドのダイナミズムで押し広げるものなのですね。様々な時期の楽曲が揃った今作を聴いて、やはり dip とはヤマジカズヒデそのものであり、アウトプットの形が違っても常に変わらない部分が残っていて、それは世代を問わずロック好きに響く魅力を保ち続けているのだなと。


ただ個人的に一番好きな 「underwater」 の曲が無いのは残念でしたけどね。


90年代より活動を続けるロックバンドのトリビュート盤。


Rating: 7.5/10