Grimes 「Visions」

Visions

Visions


じゃあ君はカナダ生まれだから C-POP ね!


そう言えば Crystal Castles もカナダ出身だったことを思い出す。何処となくチープでキッチュな新世代インディ・エレクトロポップというところでは共通しているかと思いますが、別にこの女子がライブで取っ組み合いの喧嘩をしたりするわけではなく。本人は様々な国のポップス (それこそ K-POP まで) をこよなく愛しておるという情報を見かけましたが、確かにポップであることにある種のポリシーを感じさせる、その洗練されたキュートなメロディが印象的。華やぐようにカラフルで、仄かにエキゾチックでもあり、奔放な無邪気さと蠱惑的な魔性が綯交ぜになったような、つまるところガールズポップとしての普遍的な魅力がキラキラと秘められています。


しかしトラックのスカスカした軽さに逆行するように、ヴォーカルは空間を隙間なく塗り潰すかのごとくダビーな空間処理を施されています。輪郭の滲んだミステリアスな歌声と素っ気ない顔をして同居するテクノポップ、この不均衡な対比がまた妙な立体感を生み、入り組んだ迷路のように聴き手を惑わせる。これもポストダブステップの流れにあるという認識で良いのかしら。それらは大層な実験精神といったものでもなく、 「ポップスなんだから何でもアリじゃん」 とでも言いたげなライトな遊び心。


そう、みんなやりたい放題やれば良いのです。


お気に入りは 「Oblivion」 「Circumambient」 「Vowels = Space and Time」 「Colour of Moonlight (Antiochus)」 など。メロディの中に80年代、90年代、00年代それぞれの時代の色を織り込み、ノスタルジックでありながら現在進行形のスタイリッシュな質感を保つ、また無闇に派手に仕立てて曲の強度を損なわせる (飽きやすくさせる) ことはせず、押し引きのバランスも絶妙。この辺のセンスはさすが最新鋭といった感じで唸ってしまう。刹那的で感傷的、だけどやっぱり享楽的。心のベスト10第1位はいつもそんな曲。


バンクーバー出身、 Claire Boucher のソロユニットによる1年3ヶ月ぶり3作目。


Rating: 8.4/10