喜多村英梨 「RE;STORY」

RE;STORY(初回限定盤)

RE;STORY(初回限定盤)


オープナー表題曲 「re;story」 の時点で全てが詰まっています。ヒロイックでセクシー、フレッシュな勢いを感じさせるヴォーカル。骨のあるソリッドなヘヴィネスで攻め立てるメタリックサウンド。シリアスな疾走感と心地良く突き抜けるメロディ。これらポップスがポップスとして凛然と輝くための必須ファクター、全てが。


本人がすでにメタル好きを公言してるらしく、それだけに 「この曲調に対して自分の歌はどう臨むか」 を完璧に把握し、そのキャラクターを見事に演じきっています。一歩間違えれば完全にヴィジュアル系なメタル J-POP 、その方向性を勝利の方程式に則ってとことん煮詰めた、濃厚にして後味スッキリな声優ガールズポップロックの理想形。 「紋」 ではジャパネスク、 「Baby Butterfly」 ではジャズ、 「LOVE&HATE」 ではデジロックといった具合に無理なく幅広い曲調を取り揃えてるあたりも実に用意周到。つーか 「LOVE&HATE」 なんて俺にはどう聴いても the GazettE あたりがやってそうな V-ROCK にしか聴こえなくて、それを可愛い女の子が格好良く歌ってるんだから降参する以外に手はありません。


しかしこういったアグレッションは 「Be Starters!」 を境に急変します。まるで服を着替えたようにキュートで溌剌とした Kawaii ヴォイスへと声色をシフトし、風通しが良くなって爽快感が増した正統派ポップスに転身。あまりに見事な変貌っぷりでマジで別の人の曲が始まったかと思った。黒キタエリから白キタエリへ、前半と後半にこの2つの要素が局在した構成は、彼女の声優シンガーとしてのプロフェッショナルな技量をアピールする効果的な仕掛け。特に 「Happy Girl」 はちょっと衝撃というかなんというか。個人的にはやはり前半の系統が好きなんですが、この流れの巧みさで最後まで一気に聴き通せてしまう。エネルギッシュで活きが良い、という意味では全編同じですし。


とにもかくにも、久しぶりにこの手のポップス聴いて脳細胞をチクチク刺激されている今日この頃なのでした。音楽には正義が大事!


Rating: 8.4/10