V.A. 「UNDERRATED」

UNDERRATED

UNDERRATED


君たち、今2012年ですよ?


先鋒、 Lillies and Remains 。昨年のアルバム 「TRANSPERSONAL」 で一皮剥けた印象がありましたが、今作でも高いクオリティを維持しています。無闇に音を厚くせずシャープに研ぎ澄まされたアンサンブルと、効果的に色を添えるシンセ音。低熱に抑えられた抑揚と端正なスピード感、その中からゆらりと浮かび上がる憂鬱なメロディ。ストイックなバンドサウンドとポップネスの対比が絶妙で、もし BUCK-TICK が 「TABOO」 以降に方向性を変えず活動を続けていたらこの音に辿りついたんじゃないか、という妄想をしてみたり。特にオープナー 「Final Cut」 は白眉。


中堅、世界的なバンド。人力でミニマルなループを繰り返すリズム隊と、空間的エフェクトでスペーシーな広がりを生み出すギター。それらが聴いてるうちに意識の深遠に潜り込んでいくような陶酔感を醸し出します。80年代ポストパンクから現代のポストロック、あるいは dip あたりの影響もあるかもしれません。ただ身も蓋もないバンド名からも窺えるように、技術や理論より先にやけっぱちの初期衝動、表現欲求の方が先走ってる感じで、インテリジェントな雰囲気がありつつも荒削りなテンションが炸裂していて愉快。


大将、 PURPLE 。これはまずい。重症です。 Bauhaus の素っ頓狂なノイズギターが響かせる狂気、 Virgin Prunes の呪術的禍々しさ、 Joy Division の諦観しきった空虚な感覚…などといった名前が思い浮かびました。とにかく80年代アンダーグラウンドの湿っぽい瘴気をそのまま持ち込んだかのような、キナ臭く毒々しいポジティブ・パンク。極端にディレイ/リバーブ処理を施されたヴォーカルを筆頭に、まるで悪意の塊のような音が波状的に襲い掛かってくる。最後の 「Untitled」 はまるでサバトの儀式に響き渡る地獄からの呼び声のよう。


総じてゴシック/ポジパンを主としたニューウェーブサウンドの前衛的で在れとする姿勢を、サウンド面でも精神面でも継承した奇特な3バンドでした。ポップロックとして一番真っ当なリリーズ、サブカル的実験精神でぶっとばす世界的、ダメ人間集団の PURPLE 、という感じで何となくバランスが取れてる気もする。


3バンドの新曲で構成されたスプリットアルバム。


Rating: 8.3/10