清竜人 「KIYOSHI RYUJIN」


虚飾を剥いでも奇人は奇人でした。


ヲタカルチャー由来の打ち込み電波ソングへと急変し、声優多数参加で奇形のミュージカルの様相を呈していた 「MUSIC」 。本作ではそこからまた路線変更して、本来のギター/ピアノ弾き語りスタイルに回帰しています。しかしその 「MUSIC」 で致死的なまでに自らの欲望、自意識をブチ撒けてしまったら、その壊れた蛇口は簡単には元には戻らず。柔らかな歌声と素朴な演奏が紡ぐのは、思わず目を疑うようなタイトル群が示す通り、彼の持つ思想、疑念、葛藤など心の内部を痛々しいまでに曝け出した、 「MUSIC」 とは別の意味でエキセントリックな内容になっています。


「ぼくはロリータ・コンプレックス」 と 「ぼくはバイセクシャル」 は何だかガチな気がして仕方ないのですが、実際彼がそうなのかは重要な所ではなくて。題材こそ際どいものばかりですが、きっと彼が本当に伝えたいことは、いずれも歌詞の最後のセンテンスに表れています。例えば 「ロリコン」 では結局の所 「他人との違いを受け入れて、幸せを分かち合おう」 ということですけど、もし身近な友人知人からロリコンであることをカミングアウトされたら、あるいはもっとアブノーマルな性癖だとしたら、果たして自分はそういう姿勢になれるだろうか、と。自分自身を踏み絵として聴き手にも内省を迫る、諸刃の剣のような作品でもあります。


こんな内容がセルフタイトルであることは必然だったのかもしれません。思えば彼はデビューした時から感情の機微や思想を繊細に表現してきていましたが、その表現の純度が一層研ぎ澄まされ、それに伴ってひり付くような痛々しさも増してきたということでしょうか。通販限定&ライブチケットとの抱き合わせ販売という敷居の高さはありますが、彼の本質的な哲学を覗き見ることができる興味深い作品だと思います。


7ヶ月ぶりとなる5作目。


Rating: 7.5/10