犬神サアカス團 「恐山」

恐山

恐山


犬神ちゃんと聴くのって何年ぶりだろう…。


俺と犬神の出逢いは10年以上前に遡ります。オムニバス 「異形の宴」 に収録されていた 「赤痣の娼婦」 と 「エナメルを塗られたアポリネール」 がソレ。特に凶子の語り (叫び) が全編を占める後者は聴いてて本気で震え上がったものです。当時はまだ自分が10代でアングラなものに対する免疫が無かったというのと、泥臭く湿っぽい音質だったというのも関係あるかもしれません。単純に怖かった。しかし単なる嫌悪感ではなく危険なものに対する好奇心の方が強くあり、不思議と惹かれてしまう魅力を感じていたのを覚えています。その後は迂闊なバラエティ進出などで熱が冷めてしまっていたのですが (本人達は楽しんでいたというけど、それにしてもなあ…) 、本作では名義をマイナーチェンジしてアングラな方向性に回帰すると意気込んでいるらしく、久々に手に取ったという次第です。


ああ…俺の知ってる犬神だ!


鈴木研一人間椅子) による東北訛りの口上から始まり、次には凶子が憎悪/怨念/悪意の吹き溜まりをコブシの効いたズベ歌唱でブチ撒け、響き渡る高笑いが悍ましい狂気を演出する。70〜80年代ハードロックを基盤とした演奏は歌詞世界の禍々しさを助長させるのに十分な迫力。バタバタと勢い良く疾走する 「被害者面」 「陰謀論」 や、地獄の底から湧き出るようなスロウナンバー 「排水溝」 「嘔気」 など、放送コード完全無視の直球勝負オンパレード。例えばかつての盟友ムックがメジャーになって垢抜けたのに比べて、こちらは楽曲から衣装に至るまで相変わらず業のようなアングラの闇に浸かっており、良くも悪くも不変の存在感を放っています。


犬神サアカス團の名の下に作るアルバムはもはやこれ一枚で事足りるのではと思うくらいに、狙い定めた方向性を突き詰めるという意味では申し分なし。ここからさらに深い場所へと円熟していけるのか、チェックは続けておこうと思います。かつての地下室系/密室系のスタイルを正統な形で守っているのは彼らぐらいになってしまいましたからねえ…。


1年10ヶ月ぶりとなるフルレンス9作目。


Rating: 7.4/10