My Bloody Valentine 「Isn't Anything」 「Loveless」 「EP's 1988-1991」
- アーティスト: MY BLOODY VALENTINE
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そもそも、ヴィジュアル系好きに受けそうなバンド名だと思うんですよね。マイブラ。
何事においてもV系が判断の基準に在る可哀想な脳ミソなので、洋楽で良さそうなのを探す時も頼りにするのはV系の人。この場合は cali≠gari の石井秀仁が 「カリ≠ガリじゃないじゃない (T-T)」 でやってたソロプロジェクト 「千葉市」 です。「俺の血 2.14」 て曲がありましてね、まあ、そういうわけなんですよ。なので洋楽遅咲きの俺にしては結構早い段階でマイブラには手を出してたんですが、正直最初は取っ掛かりが掴めなくて難解だナーと怯んだのですけども、何か得体の知れない魅力があるようにも思い、しつこく何回も聴き続けてたら知らん間に好きになってたという当時10代の成せる業。やればできる!
他だと Plastic Tree が 「Thirteenth Friday」 で笑えるくらい完璧にシューゲを模倣していたり、 baroque がシューゲとヒップホップ/ドラムンベース/エレクトロニカを融合させた名盤 「sug life」 を作り上げて解散したり、細かい所では元 Fatima の人が obscure というユニット結成してシューゲ/ドリームポップなサウンドをひっそり作っていたり (もう解散したのかな) 、あと最近の若手だと DISH なんかもそのケがあるようで。探してみればシューゲを導入してるバンドってそれなりにいるもので、何でもかんでもやってみようで通ってしまうV系の悪食で強靭な胃袋はこういう所でも発揮されているのです。
でも、何かのジャンルにおけるオリジネイターが他の追随を許さないオリジナリティに満ちていて、オリジンでありながらそのシーンで異端と化していることはままありますよね。要塞のようなエフェクターボードから放たれる彼らの音は後進のシューゲバンドのどれにも似ておらず、ひどく緻密なのに荒削りで、甘美なのに劇薬で、凶暴なのにポップ。幾層にも重ねられたノイズ成分がサイケ/ポップの柔らかなヴェールに覆われることなく、むしろそのヴェールを棘で蜂の巣状に突き破ってると言うか、強烈なノイズが音響処理でコーティングしきれないオーバーロード状態にあるように思います。特に 「Isn't Anything」 や初期の曲は脳天をドリルで抉られるような、密に詰まったいかついノイズサウンドによるロックンロールサウンドが展開され、シューゲによくある清涼感や甘酸っぱさよりも、白目剥いてナイフを振り回すピエロのような楽しい狂気が前面に出ています。今回のリマスターによってその狂気は数割増し、聴いてるこっちも白目剥きそう。
そして 「Loveless」 は今更俺ごときが何か説明するまでもないと思いますが、やっぱり異端だなーと思います。 「When You Sleep」 「I Only Said」 などにはネオアコらしいメロウな感覚が表れていたり、 「Only Shallow」 は改めて聴くとえらくリフが豪快でハードロックみたいだなと思ったりしますが、そのいずれもが独自の音響処理で激しく捻じ曲げられており、まるで過去でも未来でもないこの世ならざる世界で鳴ってる音のよう。シューゲを聴くときに俺はよく 「青春っぽい」 という感想を抱くのですが、こんな地下の実験室で人知れず蠢く化け物みたいな音が青春だとしたら、外に出ても決して他人とは相容れない、やはりここで終わらざるを得ないな、とか。
アイルランド出身の4人組による、80年代後半〜90年代初頭にかけての作品のリマスター再発盤。
Rating: 8.7/10 (Isn't Anything)
Rating: 9.5/10 (Loveless)
Rating: 8.9/10 (EP's 1988-1991)