andymori 「光」

光


年を重ねるとともに素直になっていくことも、ある。


前作 「革命」 でも兆候はありましたが、斜に構えた表現というのが今回ほとんどなくなり、まっすぐに世界を見つめる、自分を曝け出す、正しいと思う方向へ向かう、楽しい時間を精一杯楽しむ、そういった衒いのないポジティブな明るさが満ち満ちています。もう本当に、一昔前の青春パンクかと思うくらいストレート。バンドサウンド自体はさほど大きな変化はないですが、歌詞に合わせてか性急なスピード感よりも大らかなグルーヴの方へと幾分か比重が傾いてると思います。この変化はもしかしたら 3.11 を切っ掛けとしたものかもしれませんが、一撮みのシニカルな毒を内包していた以前と比べてパワーの質が変わり、これを良しと出来るファンはどれくらいいるでしょうか。俺の予想では少数派のような気がしますけども。


ただどちらにせよ、彼らは基本的に 「現在」 の自分にとって最もリアルな感情/考えを最優先させるというアティテュードであるのだなと。経験を重ねることで知識も手段もどんどん増していくけれど、その情報の海の中で溺れてしまうことも時にはある。けれど彼らはそういった経験を経た上で自分の考えをシンプルに純化させ、信じる道を見い出したらあとはもう全力で走っていくしかないと、表現の強度を増加させることに注力しています。これってなんだか人間の成長そのものなのかもと考えてたけど、文字にすると全くまとまらないし説教臭くなってしまうのでやめます。今しかできない表現をストレートに出し続けるという意味では、彼らのフレッシュな勢いは相変わらず健在です。


しかし、かつての彼らと比べるとクセが無くなってスルスル流れてしまうのもこちらとしては事実。サウンド面で特別な試みがあるわけでもないので、歌詞のテンションに受け手がどれだけ同調できるかがキモだと思うのですが、個人的にはまだ過去の魅力に打ち勝つほどではないかなと。心情の変化とともに歌詞の表現も変わるのはロックバンドとして正義的ではありますが、もうひとつ説得力をつけるには同路線でもう1枚作ってからかも。


11ヶ月ぶりとなる4作目。


Rating: 6.0/10