山本美禰子 「Lazward -Mineko Yamamoto Works Best-」

Lazward ?Mineko Yamamoto Works Best?

Lazward ?Mineko Yamamoto Works Best?


この人いつの間にこんな仕事してたんすか。


ジギタリス本隊でも発揮していた、 Kate Bush を彷彿とさせる演劇的で感情過多な歌唱、ミステリアスであどけない魅力。その魅力がソロにおいては様々なクリエイターのバックアップを得たりタイアップを意識したりで、より自由度の増した形で翼を揚々と広げています。それはもう、従来のイメージの延長線上であったり、えーそっち行くの?みたいな路線だったり。


ある種プログレッシブとも言える幻想的な世界観の 「Falling, The Star Light」 「Cadena」 「Lazward 〜風の行方〜」 「Pilgrimage」 なんかはエキゾチックな切なさを湛えたメロディが沁みる、 Kalafina に通じそうなポップ・ファンタジー秀曲。この辺は実に彼女らしいと思うのですが、そこからキラキラ疾走トランス 「Legend」 や、ギターがザクザク噛んでくる活きのいいアニソンロック 「snow flake*」 に至る距離感はえらくダイナミックな気が。どんな曲調でも悪食の胃袋で飲み込んでしまうのは二次元関連にはよくありますが、以前から 「幻想的 (ケイト的)」 という染みついたイメージがある人だけに、この曲調の幅広さにはいささかビビります。


そしてこの人の場合クラシック/声楽を基盤に持つ若干オペラチックなヴォーカルなのですね。そのためシアトリカルという印象になお拍車がかかり、無駄にヒロイックだったり Kawaii に特化したりといった所謂二次元ソングとは微妙な差異がある。この毛色の違いを単純にコレジャナイと捉えるか、他にはありそうでない魅力の一つとして捉えるか。俺はそのギャップにニヤニヤしながら後者と受け取りたいです。豊かな包容力、伸びやかで暖かみのある歌声は様々な表情を使い分け、ミュージカルの演者のように別世界の住人のひとりとして色彩豊かな世界観を見せてくれます。それはアニメ/ゲームの魅力を助長させるものとしては、実に幸福な出会いじゃないかなって。


中盤にある疾走サイバーロック 「EXEC_HYMME_FRAY=FRANCESCA/.」 と、厳かでダークな雰囲気が圧し掛かる 「EXCEC_FRIP_METAMORPHOSE/.」 。エディットを加えてクワイア風に折り重ねられた非言語ヴォーカルは強烈なインパクトを持っていますが、彼女の力量があるからこそそのアイディアがネタに終わらず、十分な強度を持って聴かせられるのでしょう。局所的に強い根を張るポップアイコンとして、すでに安定の貫禄すら漂わせています。


アニメ/ゲームタイアップ曲を中心とした初のソロアルバム。


Rating: 7.9/10