SUGIZO 「FLOWER OF LIFE」 「TREE OF LIFE」

FLOWER OF LIFE(DVD付)

FLOWER OF LIFE(DVD付)

TREE OF LIFE(DVD付)

TREE OF LIFE(DVD付)


まずは昨年末のおさらいから。


ここ数年の間にデジタルリリースされていたシングル曲を網羅。また過去作のリメイク、 Juno Reactor や System 7 、さらには故 Mick Karn をフィーチャーした楽曲もありと、彼のリスペクトに由来する人脈を総動員。そういった物理的な事実だけでなく、彼の持つ音楽的嗜好、テクニック、サウンドメイキング、また楽曲に込めた思想、メッセージも含め、10年以上に渡る SUGIZO ソロワークの集大成がこの2枚に詰まっています。


ディストーションクリーントーン、アコースティック、ワウ、アルペジオ、カッティング。そういったギターにおける様々な音色/奏法が秘める可能性を十分に引き出し (もちろんヴァイオリンにおいても、本来の優美な響きからエレクトリックならではのノイズサウンドまで駆使) 、自身のフィルターを通して余すことなく、豪快かつ繊細にキャンバスへ塗りたくった楽曲群。戦闘機の名前がタイトルに冠せられた 「ENOLA GAY」 では全てを灰に帰す戦争の凄絶さ/非情さを表現するような緊張感に満ちたへヴィリフ。 「NO MORE NUKES PLAY THE GUITAR」 ではむしろ PLAY THE GUITAR のキッズ的な楽しさを表現した軽快で痛快なストロークプレイ。 「ARC MOON」 では艶やかで美しいクリアサウンドが用いられ、月の光が映し出す清らかで幻想的な世界を展開しており、 「ASIAN MYSTICISM」 は異国情緒を匂わせるミステリアスなムードと幾ばくかの遊び心も垣間見えたり。


リズム面において最たる主軸となるのは4つ打ちトランス。もともとクラブミュージックにも造詣の深い彼でしたが、ここでは最新鋭の流行ではなく、シンプル故に微妙な匙加減で印象の変わってくるトランスサウンドの深みをあくまでも追及。太く硬いアタック感で一打一打が確実に体に響くこの分厚い強度と、最も血肉に対してダイレクトに伝わる躍動感が必要だったという判断なのかもしれません。その狙いをストリクトに絞ったのは正解だと思います。ギターサウンドの多彩さをリズムの骨格がガッチリ支え、強固なトータリティを維持しています。


音の焦点を定める点での徹底度で言えば 「FLOWER〜」 ですが、 「TREE〜」 には逆に実験性やヴァラエティの幅広さが面白さとしてあり、甲乙はつけがたいです。しかしながらどちらも始まりから終わりの瞬間に至るまで、彼の音楽的/政治的/宗教的世界観が反映された完璧主義的な内容。 (「FLOWER〜」 「TREE〜」 といったアルバムタイトルにも彼の信仰する宗教的意味合いが含まれているようですが、そこまでは掬えず…。) 果てしなく膨張して広がっていくけれど、何処かしら手の届かないような壮大さ、荘厳さがあり、20曲120分超という質量だけではなく目に見えない重みを強く感じさせる、それは彼の言う 「宇宙的」 というタームのイメージに100%合致するもの。決して敷居の低い内容ではないですが、ある一人のギタリスト、音楽人の生きざまが深く深く刻み込まれた作品として、その聴き応えと説得力は確実に聴く人にインパクトを与えると思います。


LUNA SEA のギタリストによる8年ぶりのオリジナルソロ作品。


Rating: 8.5/10 (FLOWER OF LIFE)
Rating: 8.2/10 (TREE OF LIFE)