sleepy.ab 「neuron」

neuron

neuron


自分は彼らに対して、少々乱暴に言えば 「Plastic Treeスピッツ」 という印象を持っています。それはもちろん音楽的に通じる所があるのと、作風を少しずつシフトしながらマイペースにアルバムを作り続ける、その職人的姿勢にイメージをダブらせているからです。


エレクトロニカやポストロックを通過した緻密で繊細なバンドアンサンブル、しかし基本はあくまで柔らかく暖かなメロディを軸としたポップな曲作り。作品を重ねるごとにそのポップさが増量し、外に開かれていく印象を受けていましたが、今作も同様の路線で順当な進化を遂げています。さらに今作ではドラマー交代の影響が明確に表れていますね。ファットで大らかな横ノリを主としていた前任者から、端正でシャープな直線的ノリの後任者に代わり、ロックバンドとしてストレートに垢抜けたと思います。


オープナーを飾る「euphoria」 は人力4つ打ちのダンサブルなビートが軽やかに身体を揺らす、彼らの新境地と言える楽曲。これは新編成だからこそ出来るようになったものでしょう。他は相変わらずミドルテンポの曲が並びますが、牧歌的な陽の光を思わせる 「ハーメルン」 「cradle song」 と、奇妙な不穏さが流れる 「undo」 「darkness」 など対照的なムードを持った楽曲が混在し、彼らの音世界が一筋縄ではいかない奥行きを持ったものであることが示されています。また後半の曲では前任ドラマーによるテイクが使われており、こちらはやはり従来の彼らの持ち味、クセが強く出ていますね。サウンドの変化を分かりやすく感じ取れるアルバム構成も面白い。


おそらくバンドとしては過渡期にあたる作品でしょう。ここからドラマーを正式に固めるか、色んな人とセッションしてより多面的に見せていくか、いずれにしても新たなグルーヴを獲得して表現の幅を広げていくことになると思います。ただ彼らのことだから浮ついた変え方はしないでしょう。少しずつ、地に足を付けたまま、じっくりと。


2年ぶりとなる8作目。


Rating: 7.8/10