Moran 「jen:ga」

jen:ga (初回限定盤)

jen:ga (初回限定盤)


うっかり初回盤買ってしまったりするのでV系商法は誰が何と言おうと悪。


ピアノやヴァイオリンを導入した 「薔薇色の地獄」 にロカビリー風のスウィングで捲くし立てる 「紅差し」 と、ジャズ要素の強い楽曲をオープナーに据えることでオリジナリティをハッキリと打ち出しています。こういったジャジーな曲調というのはV系には割とよくあるネタですが、彼らはジャズの持つ洒脱なグルーヴ、ムードに対して他バンドよりずっと高い意識を持ってることが伺える…しかし次の 「ロワゾ・ブルー」 では原色のシンセと性急なディスコビートが切り込むアッパー曲、ってあれー?


その後は基本的にアッパーな楽曲がメインを占めているのですが、ヘヴィネスに頼らない緻密なギターを軸に、何処か深遠でミステリアスな奥行きを持ったサウンドを展開しています。少しばかり Plastic Tree などを彷彿とさせる所がありつつ、冒頭のジャズナンバーであったり、 「Wing or Tail」 では牧歌と淫靡が入り混じった奇妙な色合いを見せたり、様々な曲調にトライしながら確かにこのバンド独特と言える個性は共通して存在します。シリアスなスピード感が映える 「Eclipse」 などは所謂キラキラ系がやってても良さそうな曲調ですが、彼らがやるとそこまでキラキラせずに幻想的なイメージが残るのが不思議。


しかし今作中最も激しい 「Maybe Lucy in the Sky」 などは手を広げすぎていて浮いている気もするし、ヴァラエティに富んでると言うにはまだ少々脇が甘い印象を受けます。個人的には彼らにノリの良さはそこまで求めないから、それよりもっとカッチリ世界観を作り込んだディープな作品を聴きたいと思うのですがどうでしょう。変なお約束とか気にせずにやりたいようにやってほしい。同じ元 Fatima であればバンド名通りに色んな意味で儚かった obscure みたいに。


2008年結成の5人組による初フルレンス。


Rating: 6.8/10