Grizzly Bear 「Shields」

Shields [帯・解説付き / 国内盤] (BRC344)

Shields [帯・解説付き / 国内盤] (BRC344)


幻惑への誘い。


アコースティック楽器や柔らかいドラムの音色などを基調とした US フォーク/カントリーが大幹ですが、それを滑らかなヴェールで包み込むかのようなサイケデリックな意匠。古惚けたオーガニックな感触を十分に生かしながら各パートの音が密接に結ばれ、音響面におけるインテリジェントな実験性がアンサンブルにさらなる奥行きと広がりを与えています。なだらかな起伏を生み出すグルーヴは緩やかに頼りなく漂流を続ける船のようで、雨や霧に見舞われながら仄暗くミステリアスな景色の中に吸い込まれていきます。


ダイナミックとも言える音のうねりが今作の幕開けを雄弁に告げる 「Sleeping Ute」 、感傷的なギターリフが瑞々しく鳴り響く 「Yet Again」 、ようやく陽の光が差し出すもくぐもった妖しさは拭い切れない 「A Simple Answer」 など、フォーク/カントリーとサイケ/プログレの幸福な融合、それを古き良き時代への憧憬と現代の先鋭的な感覚で纏め上げた10曲。一つ一つのテクスチャーが緻密に練られた音の重層は、必要最小限のシンプルな構築美を見せつつ実に芳醇な響きとして映ります。それがスロウテンポの長尺であってもその芳醇な音世界を表現するための必要十分な構成。牧歌的なメロディセンスも何気ないようで緩やかに意識を惹き込んできます。


この温故知新を地で行くセンスの良さと純粋な楽曲の完成度の高さには唸らされる。個人的には The Decemberists など思い出しました。以前サマソニでのライブを見た時は完全に睡眠タイムだったのですが、実験要素を完全に血肉に取り込んだ今回の内容は、地味ではあってもセイレンの歌声のように聴き手の意識を呼び込み、ここではないどこかへと誘ってくれます。 US インディシーンは相も変わらず魔境でありますな。


ブルックリン出身の4人組による、3年ぶり4作目。


Rating: 8.4/10