OGRE YOU ASSHOLE 「100年後」

100年後

100年後


今作を聴いた後、久々に 「homely」 も聴き返してみました。当時はゆらゆら帝国が解散した亡き後の 「空洞です」 以降のポジションを狙ってるのかなー、などと思ったのですが、改めて聴いてみるとやっぱりゆら帝ゆら帝、彼らは彼らなのですね。当たり前の話ですが。


その前作に引き続き、プロデューサー石原洋とエンジニア中村宗一郎のゆら帝チームが今作も参加。ソフトロック/ AOR の柔らかなサウンドが空間を包み、スロウテンポの心地良さと空気に溶け込むメロディが醸し出すムードは、聴いていると徐々に底のない沼へと身を浸していくような錯覚に陥ります。各所に導入したキーボードや管楽器も当たり前のように馴染んでサウンド全体の彩りを華やかにしてる。録音面で言えば比較的それぞれの音が分離して輪郭を持ち、風通しが良くなって彼らの持つ世界観が入口の幅を広げたように思います。ポップスとして窓口が広くなり、迷宮に迷い込む人が多くなってしまった。


夢見心地の濃密な空気で聴き手を飲み込むような 「これから」 、不穏な妖しさを帯び始める 「素敵な時間」 、軽やかなカッティングとブイブイいわすベースの対比が妙にシュールな 「たぶん大丈夫」 など8曲。オルタナティブの荒々しさや躍動感などをほぼ完全に放棄し、徹底してスロウなグルーヴ、徹底してソフト/サイケな音像。このいつまでも続いていきそうな音の快楽は、 「100年後」 というタームからも同じように緩やかな死を想起させる気がして、一撮みの怖れはありますけども何処か達観した穏やかさが流れていて、そういう終わりも悪くないかな、なんて。


1年ぶりとなるフルレンス4作目。


Rating: 7.2/10