Kalafina 「5th Anniversary LIVE SELECTION 2009-2012」

Kalafina 5th Anniversary LIVE SELECTION 2009-2012(初回生産限定盤)(2CD+DVD+Blu-ray)

Kalafina 5th Anniversary LIVE SELECTION 2009-2012(初回生産限定盤)(2CD+DVD+Blu-ray)


何故5周年記念でライブ盤を出すのか。それは Kalafina がライブバンドだからです。


自分は一度だけ、シングル 「Magia」 リリース時に Kalafina のライブに参加したことがあるのですが、全くもって隙のないステージでした。バンド編成によるダイナミックな生演奏や、歌詞世界のイメージを拡張する大掛かりなステージセットもさることながら、何よりメンバー3人の歌声の魅力に完全に圧倒されました。音源テイクの再現どころかそれ以上の清涼感、艶やかさ、迫力を持ったそのハーモニーは、見る者の意識を脇目も許さないほどに強く惹きつけていました。今作ではその現場で感じられたパワーが全編に渡って凝縮されています。


様々な時期のベストテイクを抜粋した形ですが、音楽性が一貫してるのと繋ぎ目を感じさせない編集のおかげで、違和感なくフルセットの疑似体験ができる仕組み。 「overture 〜 Seventh Heaven」 の荘厳な幕開けから生演奏アレンジで勇壮さを増した 「oblivious」 、この1枚目の冒頭の時点ですでに鳥肌が止まらない状態です。ハイ、ミドル、ロウの各音域をメンバーそれぞれが司り、密接に絡み合いながらひとつの大きな流れを紡いでいく様は圧巻と言う他ない。他にも圧し掛かるような重厚さが迫る 「ARIA」 「red moon」 、アッパーな疾走感がライブの熱気を弥増す 「Kyrie」 「音楽」 、比較的風通しの良いシンプルさがヴォーカルの凄みを引き立てる 「sprinter 〜acoustic ver.〜」 など、ハイライトを挙げていくとキリがないくらい。


改めて聴いても、彼女らのヴォーカルのスキルは完璧と言って良いくらいに高いですが、音源ではその完璧さが何処か非現実的な聖性を放っていたのに対し、ライブでは生々しい感情の昂ぶり、血の通った暖かさ、熱さを強く感じることができるのですね。それによって原曲のムードが損なわれるようなことは一切なく、むしろより強固な説得力を持って響いてくる。ある種プログレ的とも言えるシンフォニックで幻想的な音世界、それをキャッチーなポップスの領域に落とし込んだ梶浦由記Kalafina のタッグは、 J-POP のひとつの理想を体現していると俺は確信しています。ベスト盤とも言える選曲と2枚組の大ボリューム、そして彼女らの持つ魅力が存分に詰まった決定盤です。


女性ヴォーカリスト3人組による初のライブ盤。


Rating: 9.5/10