ハイスイノナサ 「動物の身体」

動物の身体

動物の身体


本来なら MINAMI WHEEL でライブ見たあとに音源さらっておくべきだったのだけど。


シャープに研ぎ澄まされた精緻なエレクトロニクスと、技巧を駆使した流麗なバンドサウンド。両者の間に境目はなく、冷たい無機質の感覚と深遠な美しさを湛えたサウンドスケープを展開しています。シンセやギターは透明感のある音色を基調としており、点が線を、線が立体を成していくようにテクスチャーを足し引きして全体を紡ぐ。これらはテクノの整合性による快楽を醸しながら、ライブを見た後で分かるようにほとんど全てが人力に依るものなのでしょう。このバンドアンサンブルの完成度の高さには舌を巻くばかりです。ミニマルな構築美を体現する 「地下鉄の動態」 などは彼らの目指す方向性を最も端的に表した楽曲と言えるかもしれません。


その一方で繊細な女性ヴォーカルが様々なアプローチを執っているのも面白いです。前述の 「地下鉄の動態」 ではフラグメントに分断されサウンドの骨組の一部と化していたり、 「水の形、面の終わり」 では音響処理によって幻想的な浮遊感を見せたり、 「モービル」 などではしっかり歌詞が聴き取れる形で真っ当な歌を披露していたり。サウンド志向でありながら、歌/声の在り方に対して様々な趣向を凝らし、長くとも4分程度の 「ポップソング」 に纏め上げているという、そういった意味でも構築に対する美意識を感じます。


toemouse on the keys などの影響を感じつつ、残響レコードらしい知的で鋭角なアグレッションも携えている。それ以上にこのバンドならではと言えるオリジナリティは十分に感じます。幾何学的でありながらそこはかとなく優しさ、優雅さを滲ませるサウンド。次作ではさらに化けそうな予感も。


2004年結成の4人組による初フルレンス。


Rating: 8.0/10