9GOATS BLACK OUT 「CALLING」

CALLING

CALLING


明けましておめでとうございます。まずは昨年の取りこぼしからよろしくお願いします。


漾氏の関わるバンドは常に堅実であり、地に足を付けた独自のスタイルを持っていると思います。安易に流行に流されることなく、深く妖しいダークネスとゆらり立ち昇るセクシャリティ、歌謡曲へのラインギリギリな憂いを湛えたメロディ、そしてヘヴィに寄りつつも緻密に構築されたアンサンブル。今作でもそのスタイルは変わらず維持され、非常に彼ららしいと言える世界観を展開しています。


シリアスな疾走感のある 「dye an unease」 「BLANK BLACK」 ではより一層バンドらしい肉体性を増しており、 「Panta rhei」 のようなミドルの歌モノでは完全に漾氏の独壇場。さらには 「Shut up "G"」 でアグレッションの最高値を更新していたり、ラストの 「rip current」 「8秒」 では今までの憂鬱なムードを振り切るかのようにメジャー感の明るさを振り撒いています。順当に表現の幅を押し広げている部分もあり、実に手堅い。ただその手堅さが逆に仇になっている部分もあると言うか、やはりこちらの想定内で収まってしまっているという寂しさもないことはないです。でもそれが彼らの性分であり個性なのだから、これから先でその個性をさらに煮詰めて説得力のある一発を出してくれればいい…


と思っていたら解散の報が。


Galruda の時も GULLET の時もそうでしたが (D'elsquel はよく知らない) 、よしこれからと言う時になって彼のバンドは消失してしまう。 9GOATS はまだ長く持った方ですが、まるで蜉蝣のように短命に終わるその儚さもあって、彼の作る音楽は何処か今にも消えてしまいそうな、不安定な危うさを内包してる気がします。考え過ぎか?


2年9ヶ月ぶりとなる2作目にしてラスト作。


Rating: 7.5/10