ドレスコーズ 「the dresscodes」

the dresscodes(初回限定盤)

the dresscodes(初回限定盤)


ロックンロールなんですの。


後期にはバンドの枠をほとんど崩した音楽性に移行し、バンド自体も解散してしまった毛皮のマリーズ。武道館で華々しく散ったあとにこういったバンドを結成するといったあたり、志磨遼平は自身の音楽活動をひとつのドキュメンタリー作品と見なしている節があります。初期衝動を炸裂させる初期から円熟味を見せる後期へ。確固たる美学を持った華麗なるロックスターの道程かくありなん、という感じで。おそらくこのバンドもアルバム数作を重ねたあたりで解散し、志磨はソロ活動へと移行して、さらにその後には毛マリとドレスコーズいっぺんに再結成させることでしょう。あんまりそういうことすると人徳なくなるからやめたほうがいいよ。


それはさておき。このアルバムは (おそらく志磨が10代の頃から聴いてきた) オールディーズ・ロックンロールへの憧憬と審美眼に貫かれています。シンプルなフォーピースのロックンロール。ブルーズ。パンク。ここにあるのはだいたいそれくらい。音作りも至ってシンプル。贅肉を削いだソリッドなアンサンブルで、ささくれ立った熱量と滲み出る男の色気、殺伐とした寂寥にポップさを一撮み。夜明けの光を感じさせる力強さの 「Lolita」 「Trash」 、グルグルとうねるリズム隊に引っ張られる 「Automatic Punk」 、火花を散らす緊張感の中でセッションが繰り広げられる 「誰も知らない」 「1954」 など12曲。


きっと正しい意味での 「ロックバンドのファーストアルバム」 というものはこういうものなのでしょう。かつての The Stooges や The Clash なんかがそうだったように、余計な装飾や小賢しさは要らない。青い炎のように燃えるエモーションと、突き刺さるような鋭さがあればそれでいい。ただ彼らがそこまでイノセントかと言われるとそうでもなく、裏側では非常に知的な印象も受けるのですけどね。


今年1月に結成した4人組の初フルレンス。


Rating: 7.4/10