Anaal Nathrakh 「Vanitas」

Vanitas

Vanitas


なお暴虐の限りを尽くす。


他のバンドとは確実に一線を画す、致死量以上のアグレッションが今作もひたすら詰め込まれています。彼ら自身が 「Eschaton」 で確立したサイバー・ブルータル・デスメタルの路線を今回も踏襲。圧倒的な音圧やスピード感、断末魔の叫び声のようなヴォーカルはさらに最高値を更新し、絶え間なく鼓膜をズタズタに切り裂いてきます。本当に、人の仔とはとても思えないくらい。


マイナーチェンジとしては、 「To Spite the Face」 や 「You Can't Save Me, So Stop Fucking Trying」 などで高速打ち込みビートが挿入されており、リズムの質感に微妙な変化をつけることで全体の無機質グルーヴにうねりが加わって、体感速度はさらに増し、さながら妖刀のような鋭さをもって聴き手に迫ってきます。その他 「Forging Towards the Sunset」 ではサビで荘厳な歌声とメロディがいきなり顔を出すといった得意の必殺パターンもありますし、ギターリフからも苛烈な攻撃性の中から哀愁、寂寥のような感覚が浮かび上がることがあり、それはこの世のものとは思えない醜さと美しさの同居で、ドラマチックな感動を呼び起こさずにはいられません。


ちなみにタイトルのヴァニタスとは様々な隠喩を含んだ静物画の意味ですが、ここには静かな場面など一瞬たりともないし、隠喩めいた奥ゆかしさなど微塵もないです。その破壊音の奔流は常にダイレクトに身体中を串刺しにするし、負の感情に満ち満ちた叫びは背筋を凍りつかせる。悪意と殺意をもってエクストリームメタルの極北を開拓し続ける彼らに明日はあるのか?ないよな。


1年半ぶりとなる7作目。


Rating: 8.2/10