テクマ! 「CDでベスト盤を出すハンサムは私だ。」

CDでベスト盤を出すハンサムは私だ。/テクマ!

CDでベスト盤を出すハンサムは私だ。/テクマ!


デヴィッド・ボウイになりたがった子供。


子供といってもすでにそこそこのお年を召されてる気がしますが。80年代ニューウェーブ・シンセポップをそのまんま継承した、チープでキッチュ、スカスカでイケイケなテクノ歌謡。音の隙間やアタック感、リバーブ感なんかも絶妙に70〜80年代をトレースしていて笑ってしまう。そしてテクマ!氏本人のヴォーカルはこれまた絶妙なヘタウマ加減で、しかしながら夜の闇に紛れる男女の悲喜交々を時にはムーディに、時にはシャウトを交えながら情熱的に歌い上げる、その様は奇妙なセクシャリティを発散していて惹きつけられます。


初っ端から Dead or Alive かと突っ込みたくなる性的ディスコ 「My Sex & Your Sex」 、ちょっとジャジーでコンテンポラリーな匂いを醸し出す 「Love Kills You, But I Love You」 、このタイトルでまさかのワルツ調バラード 「以心電信」 、さらに脱臼を余儀なくされる 「テクマ!音頭」 、盲目的なナルシシズムが痛快なくらいにポジティブな 「貴女が美しく在る為に、僕は素敵で在り続けよう!」 など15曲。 AxSxE石橋英子PANICSMILE などゲスト多数参加ですが、そのいずれもがテクマ!というキャラクターを立てるためのサポートに徹しており、贅沢な無駄遣いと言うか何と言うか。


まるでロマンポルシェ。SOFT BALLET を演ろうとした結果生まれたようなサウンドは、古き良き時代への憧憬だけではなく確かな審美眼、批評性に裏打ちされたものだと思います。一歩間違えればギャグになりそうな (なっちゃってる曲もありますが) この路線をディテールまでひたすら突き詰めた結果、時代を超える愛らしさとしてすっかり完成してしまいました。彼もやはりニューウェーブが持つ業のような魔性に憑りつかれて抜け出せなくなった犠牲者のひとりなのですね。それはもはや執念に近い。


キャリア初となるベスト盤。


Rating: 7.5/10