非常階段 featuring 坂田明 「Made in Studio」 / JAZZ非常階段 「Made in Japan」

made in studio

made in studio

made in Japan〜live at Shinjuku Pit Inn 9 April, 2012

made in Japan〜live at Shinjuku Pit Inn 9 April, 2012


「蔵六の奇病」 を初めて聴いた時は 「この世の病巣みたいな音楽だ」 と思い、 「MODERN」 を初めて聴いた時は 「走馬灯のような音楽だ」 と思い、今回の2枚を初めて聴いた時は 「生命力の爆発のような音楽だ」 と思いました。


まず 「Made in Studio」 の方から。4曲のいずれも坂田明のサックスと非常階段の面々によるノイズを組み合わせた即興演奏ですが、曲によって編成が違うために4曲いずれも異なった表情を見せてくれます。坂田、 JOJO 、JUNKO 、岡野太による一点突破的な破壊力、爆心地のような壮絶さと躍動感をもって迫る 「NJQ」 、坂田とインキャパシタンツの2人による冷徹なインダストリアルノイズがシュールな無常感を漂わせる 「赤銅の中央分離線」 、坂田と JUNKO の狂気的な絶叫でパンドラの箱を開けてしまった気分にさせられる 「クラインの壷の中のウロボロスの蛇」 、そして全員参加の 「アウト・ノダ・フェ」 は、もはや言わずもがな。


次に 「Made in Japan」 。JOJO広重の雄叫びから絶え間なく爆発を続けるインプロヴィゼーションに雪崩れ込む 「Backstroke Star」 40分1発勝負。基本的には上と同じ方向性ですが、やはりライブ実況録音の方が荒々しく激しい熱量をパッケージできてると思います。一時期のピュア・ノイズから脱却し、JOJO広重はギターを構えて音楽的にもパフォーマンスでもロック的な要素を取り入れ、今回はサックスが入ってジャズ要素も追加された。観客とコミュニケーションできる音楽的言語の幅が増えたわけで、クールジャズ!ロックンロール!てな具合に熱い反応、プリミティブな快楽を返し合うことができる。ライブとしてそれ以上に素晴らしいものはないでしょうよ。


ここでのノイズはフリージャズが本来持つ刹那的な狂騒、絶頂に向かって直走る熱を最大限まで膨張させる、火に注ぐ油のようなものです。ノイズで何十分も…と言うと正座しながら試練に耐えるような聴き方を強いられると思う人もいるでしょうが、ここでの彼らは非常にジャズ的、ロック的、音楽的なもので、むしろ拳を挙げて演奏のテンションに呼応する、自分から能動的に楽しむことができるものだと思います。数あるノイズアーティストの中でも、今の彼らはポジティブな 「生」 のパワーを痛烈なほどに感じられるのです。…とは言ってもやはり人は選ぶでしょうが (笑) 。


サックス奏者の坂田明を迎えた8年ぶりフルレンスと、今年4月の新宿ピットインでの演奏を収録したライブ盤。


Rating: 8.5/10 (Made in Studio)
Rating: 8.7/10 (Made in Japan)