Flying Lotus 「Until the Quiet Comes」

Until the Quiet Comes [帯解説 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC350)

Until the Quiet Comes [帯解説 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC350)


おお、美しさよ。


つんのめるような不規則エレクトロビートはそのままに、ジャズや R&B からの影響がさらに濃厚になり、スタイリッシュに洗練されたサウンドと落ち着いたムーディな雰囲気が特徴的。色彩豊かな流麗さをより一層増し、優美なイメージを持って聴き手の意識を軽やかに攫っていきます。以前は神経質かつアグレッシブな主張をしていたビートは、ここでは空の向こうから零れ落ちる星屑のように夜の空気の中に同化して、サウンド全体を理知的かつ先鋭的なものとして引き締めています。


18曲47分がほとんどシームレスに繋がれた今作も、前作に続いて小宇宙のごときサウンドスケープを展開。 「Tiny Tourture」 「Hunger」 などコラージュの隙間から微かに生まれるメロディにハッとするような楽曲があれば、 「Sultan's Request」 「Electric Candyman」 のように意表をついて目を覚まさせるような楽曲もある。それらが密接に結び付いて一つの流れとなる構成にはやはり唸らされます。曲によっては Erykah Badu や Thom Yorke など大物がゲスト参加していますが、それらの歌声も全体の流れを損なうようなことはせず、やはりテクスチャーの一部として自然に馴染んでいます。そこにはコルトレーン家の DNA も影響してるのかもしれませんが、やはり彼自身のサンプル弄りにおける子供のような遊び心がセンスとして表れてるのでしょう。


静寂が訪れるまで、とはこの作品の終わりまでか、それとも死を想起させるものなのかは分かりませんが、個人的にはこの作品自体が静かな時間を濃密で煌びやか、かつ上品なものに演出する 「静寂のための音楽」 だと思います。ここであってる音こそが自分にとってのリッチで甘美な静寂なのです、と。


2年半ぶりとなる4作目。


Rating: 8.4/10