Ringo Deathstarr 「Mauve」

モーヴ

モーヴ


シューゲイザーバンドを何でもかんでもマイブラと比較するのもアレな気がしますが、今回どっちかというと 「Isn't Anything」 ぽいです。ゴリゴリと毛羽立ったノイズを放出しながら、性急なリズムで疾走する2〜3分台のオルタナ/パンクチューンの応酬。混濁したままぶちまけられるギターサウンドは空間系/飛び道具系エフェクトや握りっぱなしのアームによってさらにエグみを増し、夢遊病のような男女ツインヴォーカルがゆらりと纏わりつく。歌声と演奏、美醜の対比がダイナミックにつけられた楽曲群は、スピードやメロディの爽快感よりもネジ数本外れたノイズの力によって内省的かつ狂気的な印象を受けます。


単純にポップスとしても高い質で機能していた前作 「Colour Trip」 と比べると、随分とぶっきらぼうでガサツ。おそらくライブにおける瞬発力を求めたのかもしれませんが、フレンドリーな彼らの人柄を考えると結構なギャップを感じます。これも彼らの本性の一面、ということでしょうか。初期衝動そのままにガレージで合わせた演奏を深く考えることなく録って出した感じ。しかしメロディを削ったためか、どの曲もこれといったアイディアに乏しく、ショートチューンの連発でありながらやたらと冗長に感じてしまう。全ての音程が不明瞭なまま勢いに任せて発したサウンドは、何だか放り投げっぱなしの味気なさが残ります。


しかしラストの 「Wave」 は異色。それこそマイブラ 「Lose My Breath」 を彷彿とさせる儚くも美しいメロディ、寄る辺のない寂寥/憂鬱がやはり狂気的なギターノイズによって汚されていく。華やかでキュートなイメージのある Alex Gehring がこんなに氷のような冷たい表情を見せるとは。これだけでまた新しい野郎ファンが増えそう。


1年7ヶ月ぶりとなるフルレンス2作目。


Rating: 5.9/10