Animal Collective 「Centipede Hz」

Centipede Hz

Centipede Hz


Strawberry Jam」 に近いという話を聞いたのだけど、俺そのアルバム聴くのをすっ飛ばしてましたドドーン。それはさておき。


前作 「Merryweather Post Pavilion」 でセールス的にブレイクを果たしたということですけども、天邪鬼の彼らがそのままメジャー街道を突き進むようなことはしないのでした。密林の奥地で湧き立つ泉のようなサイケデリックサウンドが、今作ではジャンクでシットなコラージュノイズとの合いの子を作りました。ギトギトした原色のエレクトロサウンドが蜷局を巻くようにして展開され、捻じれたポップ感がその上にふわふわ浮遊するという、キッチュというだけでは足りないくらいの毒の濃さが注入された彼ら流の下世話シンセポップです。


人懐っこさが滲み出たようなサイケ要素は Panda Bear 、攻撃的でアヴァンギャルドな要素は Avey Tare といった感じで各メンバーの個性が結構分かりやすく反映されてるような気がしたのと、 「MPP」 の創作におけるイニシアチブは Panda Bear が握っていたのに対し、今作ではそれが Avey Tare に移ったのかな、などとぼんやり思ったのですけども、実際はメンバー4人のもっと複雑なマトリクスが形成されてるのでしょうかね。吐き捨てるようなヴォーカルが纏わりつくカオティック・ポップ 「Today's Supernatural」 を筆頭に、とにかく全編通して躁状態、トリップ状態。眠ってる身体にアドレナリン注入してビクビク波打ってるような奇形の快活さで満ちており、裏側には底意地の悪さをそこはかとなく感じます。


陽気さや派手さが増してると同時にアングラなムードや取っつきにくさも増していて、目まぐるしい情報の波に翻弄されっぱなしで掴みどころがない、というのが現段階の印象。これ聴きこめば変わるのかしら。とりあえず彼らが無難なポップをやるわけがない、実験室にこもって独自の研究を続けるスプーキー集団であるという姿勢が (良くも悪くも) 改めて露わになったわけです。


3年8ヶ月ぶりとなる9作目。


Rating: 7.1/10