Deerhoof 「Breakup Song」

Breakup Song

Breakup Song


うん、ブッ壊れてるけど、確かに歌です。


いつも通りにイビツでかわいいディアフーフです。ビートの破壊と再構築を徹底的に遂行しつつも、それがただただ難解なだけではなく、最終的にストンと収まるべきところに収まる構成の巧みさ。トイポップ的に様々な音色をポイポイ放り投げるコラージュにも似た手法。時折獰猛なエグ味を発する楽器陣に対して相変わらずすっとぼけたサトミ嬢のヴォーカル。全てが歪んでるのに混然一体となったときにポップに着地するという奇跡のような個性は今作でもバリバリ有効です。


ギッチギチのノイズがふんだんに塗された表題曲 「Breakup Songs」 に始まり、多少ヒップホップからの影響があるのかなーと思わせる 「There's That Grin」 、なんちゃってエキゾチック風味が他曲とはまた別の輝きを見せる 「Mothball the Fleet」 、まったくもって無駄にヘヴィな緊張感を繰り広げる 「To Fly or Not to Fly」 、ゲームの世界でトリップに興じるみようなプチ幻惑ダンスナンバー 「Mario's Flaming Whiskers III」 など11曲30分。え、ジャスト30分?全編通してひたすら目まぐるしく展開するためそんなコンパクトな尺だと気付かないくらい中身は濃厚。


マイナーチェンジとして、以前に比べるとバンドサウンドよりもシンセや編集の方に力が入ってるあたりは今作の特色ですかね。いずれにしても今作もまた 「これぞディアフーフ」 と言える内容で、彼らの作品は毎回そんな具合に異形の個性が貫かれてるのに、マンネリに陥らず常にフレッシュなアイディアを打ち出せるのは凄いことだと思います。おどけた子供みたいな飄々としたムードのせいでその凄さが風格とかにならないのも彼らなのですがね。いつまでも子供でいられるマジックはきっとある。あるよ。


1年8ヶ月ぶりとなる11作目。


Rating: 7.9/10