MONO 「For My Parents」

For My Parents

For My Parents


ここまで潔い作品も珍しい。


従来の MONO ファンに対しては全くもって期待を裏切らないでしょう。穏やかなクリーントーンが徐々に荒々しさを纏い始め、世界を全て飲み込む吹雪のような空間的轟音が吹き荒び、悲愴や苦悩といった深く強い感情がこの上なくダイナミックに描かれる。緻密かつ大胆に音を折り重ねた静と動の大きなうねりが一切の思考を奪い去る、ポストロックのひとつの方向性を徹底的に突き詰めた内容になっています。さらに今回では全編においてオーケストレーションを導入し、メロディも (いかにも邦人の好みそうな) クラシック方面に通じる大仰なドラマチシズムで貫かれ、他の何物も容易には近づけない聖性を放っています。


先日のフジロックでの演奏を見た時にも同じ感想を抱いたのですが、もう彼らは下手に流行りの要素や実験的な手法を取り入れることをスッパリ切り捨て、自分たちが信じるもの、自分たちの一番の武器となるもののみをとことん追求することに決めたのでしょう。ここにあるのは MONO が今までにも鳴らしてきた劇的で壮大なポストロックサウンド、それ以上でもそれ以下でもありません。しかしその方向性をとことんまで突き詰めたゆえの音の純度、強度は非常に高い。 Sigur Rós や Godspeed You! Black Emperor などの先人の名前を出さずとも、非常に MONO らしいと言えるサウンドを作り上げた、というのは大きな意義のあることなんじゃないかと思います。


5曲で55分。この構成もいかにもポストロックらしいものですが、音の起伏がゆったりとカタルシスに向かっていくための必要不可欠な尺であって、難解さはあまり感じず自然に引き込まれます。ラスト 「A Quiet Place (Together We Go)」 が放つ輝きはまるで洗礼でも浴びてるかのような清々しい心地。やはりメロディの作り方が日本人らしいというのがミソなのでしょうね。悪く言えばベタでメロドラマ的で外連味に満ちた、となるでしょうが、これが日本人ならではの個性、血だとも言える。それが彼らのポリシーでもあるし、決して切り離せない出自なのだと。


3年半ぶりとなる6作目。


Rating: 8.0/10