GOATBED 「HELLBLAU」

HELLBLAU(初回生産限定盤)(DVD付)

HELLBLAU(初回生産限定盤)(DVD付)


初期のギターロックとシンセポップを掛け合わせた作風から、作品を重ねるごとに生の要素がどんどん抜けてシンセポップに傾倒し、メロディやアレンジも俗っぽく派手でエッジィなものに変化して、昨年の XA-VAT はその変化の集大成とも言える、この上なく刺激的な作品を生み落しました。からの、コレ。


敢えて言えば 「テクニコントラストロン(2)」 の頃の実験性が戻ってきてると言えるでしょうか。低熱に抑えられた無機質なムードと、スタイリッシュに磨き上げられたシャープな音像。今までの80年代ニューウェーブな質感から脱け出して、90〜00年代のテクノ/エレクトロニカへと歩を進めたように思います。4つ打ちを軸としつつ予測のつかない入り組んだ構成を執り、感情や意味の入る隙間をなかなか見せない玄人仕様の作り。増量傾向にあったポップネスもここではグッと抑えられ、石井秀仁のヴォーカルは他のテクノサウンドと同列の素材として使われています。


「Hard Liminal」 なんていう曲もあるように、ミニマル/ハードテクノからの影響が強い今作。かと言ってダンスプロパーな志向なのかと言うとまた違う、相変わらずのヒネくれた個性も健在という。表題曲 「HELLBLAU」 や 「Paramidia+」 などは彼の持つ独自のセンスが以前とは別の形でアウトプットされた新境地と言える楽曲。また 「Only finally there is free END+」 は一抹の甘さ/切なさが風のようにスッと過ぎる佳曲だし、ラスト 「KA NA SHI MI NO A N JI」 は最も実験性の強いディープなサウンドが意味深な寂寥を醸し出す。過去の GOATBED でのアプローチを cali≠gari や XA-VAT でも活かしていただけに、てっきりそのまま同路線でアクの強いキャッチーな曲を作ってくるんだろうなと思っていたので、いささか驚きというか困惑の面持ちではあります。もちろん石井らしさというのは大幹には残されているのですが。


音に関してはほとんど石井秀仁のソロユニット状態となって、彼の現在の趣味嗜好がよりダイレクトに反映されるようになった、ということでしょうか。しかし山ほど音楽的インプットのある人なので今後どう変化していくか全く予想がつかない、飄々としたところは変わってないなー、と。


約3年半ぶりとなるミニアルバム。


Rating: 7.1/10