DOIMOI 「Materials Science」

Materials Science

Materials Science


バンド名はダテじゃない。とっても野暮ったくて、とってもエモーショナル。


鉛を引きずるようなヘヴィ・ドゥーム曲 「帆影」 、そしてその陰鬱を切り裂くような力強さが鮮やかな 「円群」 でアルバムは始まります。メタル、オルタナティブグランジを咀嚼したヘヴィサウンドは鋭さと肉々しい旨味が凝縮しており、今作では低音中音を主にダイナミズム、荒々しさを増してスケール感が広がりました。そこに言わば非メタル的、どちらかと言えば eastern youth 的な和製エモに通じるヴォーカルが乗っかり、人間味に満ちたエモーションの発散と歌心がこのバンドの個性を豊かなものにしています。


しかし一筋縄ではいきません。複雑な変拍子やトライバルにうねるリズムを軸に先の読めない曲展開がグネグネと続く。プログレッシブな要素も大きく取り入れた楽曲は彼ら言う所のナード的な側面も強く出ています。前作からの再録 「オリンピック」 が随分とシンプルに感じるくらい、今回はこれでもかと言うくらい構成が練り込まれてる。これは逆に言えば明確な山場、感情のピーク値となる部分が見え辛くなるというデメリットもありますが、それよりはやはり演奏の暑苦しい熱量、分厚く折り重なるサウンドの聴き応えで粘り強く聴かせてくれます。取っ掛かりは悪いけど、噛めば噛むほど味は出てくるはず。


デスラッシュ・ロックンロール 「バベルの灯り」 や、情感に満ちたギターソロで荒野に佇む寂寥を醸し出す 「オープンリール」 など、前回にはありそうでなかった楽曲もサウンドや表現力の進化によって成し得たものでしょう。自分たちなりの方向性を突き詰め、一層凄みを身につけた力作だと思います。


Rating: 7.9/10