MO’SOME TONEBENDER 「Strange Utopia Crazy Kitchen」

Strange Utopia Crazy Kitchen 【初回限定盤】

Strange Utopia Crazy Kitchen 【初回限定盤】


初期モーサムが全身に力一杯入れて殺気を放ってたものだとしたら、今作は脱力した自然体でブチ切れてる、的な。


百々和宏本人は 「まとめる気がなかった」 とインタビューで発言してるようですが、結果的には様々な時期のモーサムの方向性が凝縮され、これぞモーサムと言える内容に仕上がっていると思います。ギッチギチに歪んだオルタナティブ・ガレージサウンドと、80年代ニューウェーブのダークサイド (主に国産) から影響を受けたような悪ふざけに近い打ち込み。彼らの受けた影響や嗜好がカオティックに混ざり合い、まるっきり奇形のままで吐き出された狂い笑いのロックンロールです。


力強い開放感とスピードで鮮烈に駆け抜ける 「Shining」 が飛び出したかと思えば、凄まじい爆音と不可解なユーモアが交錯する 「Punks is already dead」 「communication」 、マヌケなシンセ音の挿入がB級感と不可解さを弥増す 「bone head dandy」 、さらにはタチ悪い冗談みたいなメタルリフとディスコサウンドを豪快に抱き合わせた 「ElectBoys」 、彼ら流のポストロックとでも言うべき実験インスト 「Beach Side Moon」 からの爆裂ロックンロール 「Metaluca」 、そしてラスト 「Anywhere (But Here)」 は明るい笑顔で大団円…ええー?


モーサムって普通にしてるだけで十分格好良いロックンロールバンドなはずなのに、とにかく決まった場所には落ち着けなくて、何かと捏ね繰り回そうとしてしまうのはもはや業のようなものですね。音楽性もそうだし楽曲制作のプロセスもそうだし。彼らの影響元って俺はよく知らないんですけど、多分 FRICTION とか70〜80年代のバンド聴きすぎて呪いがかかってるんじゃないかな。時期によってはその実験精神が迷走にしか見えない時もあったけど、ここまで来たらもう好きにしたら良いがなって気になりますよ。この分裂症めいた毒気は今まで散々やりたい放題やってきた彼らの純度でもあります。


1年7ヶ月ぶりとなる11作目。


Rating: 8.2/10