Anrietta 「Memoraphonica」

Memoraphonica

Memoraphonica


煌めいて逝くもの。


再生して間もなく溢れ出す、聖性に満ちた美しき轟音。その中で儚くも瑞々しい、凛とした輝きを映し出す歌声。従来のポストロックやエレクトロニカが打ち立ててきた静寂/轟音の様式美を踏襲しつつ、女性ヴォーカルを中心に立てて歌モノとして成立させた、パノラミックで幻想的なポップスを展開しています。かつて前衛的/革新的なものとして用いられてきた手法が、すっかりポップスという普遍性の地に根を張って、この上なく綺麗に花を咲かせました。


テクスチャーを重ねたギターの厚み、ピアノの澄んだ音色といった各パートは密接に結び合って、心地良い浮遊感や清涼感で胸を満たしてくれます。さらにこのバンドの場合は、ある種ベタとも言えるメロディの馴染みやすさが緻密に構築されたサウンドを小難しいものにせず、良い意味で敷居が低くなり、彼らの描く世界観への導人の役割を果たしているのが大きな魅力。3分台から7分台まで曲の尺はまちまちですが、そのいずれもが必要不可欠な纏まりで構成され、中弛みはありません。 「On the way across the rainbow」 なんかは聴きようによっては School Food PunishmentR.I.P.) が目指していた方向性にも共通するところがある気がする。


敷居の低い聖性、となるとどうしてもアニメ/ゲーム的なイメージに寄ってしまうのは俺だけの先入観かもしれませんが、だってジャケットや PV にもそういったイメージは現れてると思うし、実際俺や君もこういうの好きでしょう。ノスタルジックでファンタジック。アブストラクトな輪郭と目映い光。これはもう魅力として抗えない印籠のようなものです。


2009年結成の5人組による初フルレンス。


Rating: 8.0/10