新居昭乃 「Red Planet」 「Blue Planet」

Red Planet

Red Planet

Blue Planet

Blue Planet


ここにきて一気にお庫出し。さすがに2枚となると重量級ですな…。


各々のアルバムで一応コンセプトを分けてはいるようですが、あくまでニュアンスの差異であってさほど大きな振り幅ではありません。アコースティック楽器やバンド編成、エレクトロニクスをバランス良く使い分けながら、全体のトーンは彼女の繊細なウィスパーヴォイスによって統一され、静謐と緊張感、あるいは暖かみ、安穏とした空気が通底しており、ひとつの世界が昼夜を巡るように音の色味を移ろわせて、彼女ならではのサウンドスケープを奥深く、細やかに紡いでいます。


ウィスパーヴォイスと呼ばれる歌い手は世の中にも多くありますけども、彼女の場合はテンションを平熱に抑えながらも比較的感情の揺れが感じられるのですね。冷たい氷のような清らかさがこちらの背筋を正させるほどの聖性を醸し出していたり、躍動感を打ち出した楽曲では血の通った高ぶりを完全には抑えきれず、ひび割れた殻から溢れ出す。その感情の機微は彼女の歌い手としての表現力、その真摯さが表れているようでハッとさせられます。時系列がごちゃ混ぜになった今回の内容でもその揺れる波がシームレスに繋がれているのも、昔から変わらない彼女の矜持を感じさせます。特にお気に入りを挙げるとするなら、徐々に曇り空が開けていく開放感が印象的な 「フォロー・ミー」 、個人的には坂本真綾tune the rainbow」 を思わせるドラマチックな切なさが光る 「キミヘ ムカウ ヒカリ」 、オリエンタルで幻想的な色彩に引き込まれる 「花かんむり」 あたりか。自分はやはり色味が多彩で、歌声とのギャップがある方が好きなのかなと。


いずれにしても彼女の音世界に浸りたい方には質量ともに申し分なしの内容だと思います。ただ、前から彼女の作品を追ってきてる身としては新鮮味に欠け、2枚ともに60分超のボリュームとなるとさすがにトゥーマッチな感覚にもなってしまう。歌の軽やかさに反して曲自体の密度は高いため、良くも悪くも腰を据えて正座で聴くような感じ。ここまで出し切ってしまったら次は新境地開拓じゃないかなと思うのですがどうでしょうね。


過去に発表していたタイアップ曲、シングルのカップリング曲、再録曲に加えて新曲も追加した3年ぶり6作目/7作目。


Rating: 6.7/10 (Red Planet)
Rating: 6.9/10 (Blue Planet)