James Blackshaw 「Love is the Plan, The Plan is Death」

Love Is the Plan the Plan Is Death

Love Is the Plan the Plan Is Death


なお孤高の道を行く詩人。


エレキギターを用いた前作を経て、今作はまたアコースティックへとギアを持ちかえていますが、それ以外にもピアノやフルートを織り交ぜて音の広がりに多少気を配った曲作り。またギターの音色は低音を基調としながらもドローン成分は控えめで幾分か風通しが良く、トラッド/フォルクローレ、あるいはラテン/ボサノバ風味の哀愁ある風味を感じさせます。そういったエキゾチックな質感が今回多く見られ、流麗な美しさと妖しさや物悲しさが綯交ぜになった、ギターインストとして以前よりも聴きやすさの増した仕上がりになっていると思います。


表題曲 「Love is the Plan, the Plan is Death」 は遠く広がる荒野の夕暮れに佇むような、何処かしら軽みのある渋み/憂いがジワリと染み渡る佳曲。また 「And I Have Come Upon This Place by Lost Ways」 は珍しい歌モノ。ピアノの澄んだ響きと伸びやかな女性ヴォーカルが悲しみの影を落とします。相変わらず長尺に渡るミニマルな反復がメインではありますが、音の密度が減ったぶんイージーリスニング的な感覚で敷居が多少低くなり、感情の機微が捉えやすくなってるのではないかなと。 「愛と死は表裏一体」 それをこれ見よがしのドラマチシズムではなく、茫洋とした無常感の中で、澄んだ水が身体の中を流れていくようにサラリと、しかし確実に冷たさを残していく。


ここ何作かを連続してチェックしているのですが、彼のプレイスタイルは常に一貫しています。12弦アコギのアルペジオによるミニマリズム、そこから生まれる恍惚や陶酔、または険しいストイシズムを表現するのが彼の信条ですが、微妙に鳴らす音の質感を変える。必要最低限の範囲内で装飾を変える。録音の空気感を変える。それは注意しなければ見逃してしまいそうなレベルのマイナーチェンジかもしれませんが、それだけでも随分と音の表情は違って聴こえます。ギターという楽器の可能性を掘り下げて多用に示すことができる、彼自身の可能性もまだまだ底を尽きそうにはありません。海外ミュージシャンには珍しく、1年ペースで作品をリリースし続けてるにも関わらず。


ロンドン出身のギタリストによる、1年8ヶ月ぶり9作目。


Rating: 7.7/10