Screaming Females 「Ugly」

Ugly

Ugly


ああ、俺もロックンロールやりてえ…!


鋭くヘヴィにドライブするギターとその挙動をガッチリ支える骨太なリズム隊。実にシンプルなスリーピースサウンドですがそのぶん各々の芯は強く在り、ややグランジーな要素もある活きの良いパンク/ロックンロールの連打連打であります。近い所で連想するのは Dinosaur Jr. 。 「悪いけど格好良いことしかしたくねえ」 とばかりに印象的なリフ/ソロをぶっきらぼうに叩き付けるその様は非常に痛快です。各パートの音が非常に生々しく録られており、地下のガレージで産声を上げるその息遣いまで聴こえてくるようで、渋くささくれ立った音ながらも血の通った有機的な熱さを感じさせる…よく見たらエンジニアはアルビニ先生でした。おおう。


そしてそのサウンド以上に印象的なのがフロントマン Marissa Paternoster のヴォーカル。 Patti Smith などの系譜に当たるかと思いますが、俺的には Phew を思い出しました。女性らしい艶やかさを持ちつつも胆の座った迫力とある種のネチっこさ、突き放す冷ややかさ、そして気高さを感じさせる歌声。掻き鳴らすギターと共に聴き手をナイフでグサリと刺すような攻撃性があり、したたかに酩酊と覚醒を行き来するギラギラした魅力を感じさせます。変にロックスター然とした着飾ったことをせず、ありのままに衝動を吐き出すその姿。ただ動物的なばかりではなく独特のしゃがれたポップセンス、冬の風のように吹き荒ぶブルージーな哀愁も内包しており、それがロックンロールとしての旨味をさらに深いものにしています。


「It All Means Nothing」 「Expire」 などはこのアルバムを象徴するキラートラックであるし、 「Rotten Apple」 「Crow's Nest」 で垣間見せる牧歌的な明るさ、 「Doom 84」 では7分以上に渡ってダイナミックなグルーヴが渦巻くヘヴィなセッションを展開していたりと、パンクからハードロックまでのエッセンスを凝縮したサウンドはシンプルなようでいて芳醇。そして散々暴れたあとのラストには小品の 「It's Nice」 を。このロマンチシズムにはグッとくる。うん、おそらく最近聴いた作品の中では一番リアルであり、同時にロマンチックな作品じゃないかなと思います。


ニュージャージー出身の3人組による、2年2ヶ月ぶり5作目。


Rating: 8.5/10