LILLIES AND REMAINS 「Re/composition」

Re/composition

Re/composition


ニューウェーブ、それは死ぬまで憑りつかれる業のようなものであります。


今回カヴァーの題材に選んだのは基本的に70〜80年代のニューウェーブ/ポストパンクバンドばかり、彼らのルーツを分かりやすく曝け出したある意味微笑ましい内容になっています。 Gang of FourEcho & The BunnymenThe Smiths なんてヒネリなさすぎじゃないかと突っ込みたくなるほどストレート。しかし彼らの音楽性の血や肉を成しているものに間違いないし、これらはリスペクトの証と同時に若い衆へ向けての啓蒙主義でもあるのでしょう。彼らもミュージシャンである前に一介のリスナー/ファンであり、こんなに良い曲あるんだからみんな聴こうぜ!なんていう甘酸っぱい気持ちを持ち合わせた俺や君と何ら変わらない人種なわけですよ。うん一緒一緒。


ただ実際にカヴァーするとなればそこはセンスの違いで我ら凡人をポーンと突き放して見せるのです。残酷にも。全体的に原曲を大事にしつつも本来バンドが持つ直線的でスクエアなグルーヴ、冷たい刃物のようにソリッドなアンサンブルでゴシック/ポジパンの領域へと引きずり込む、そのバランスの妙が生きた仕上がりになっています。 「The Wait」 「The Cutter」 「Damaged Goods」 あたりは何も知らずに聴かされたら彼らのオリジナルと錯覚するような出来。この辺は一聴すればややあっさりにも感じられますが、彼らのコンテクストの豊富さと確固たる個性があってこそなのかなと。あと80年代特有のリズム隊の質感が現代風にブラッシュアップされただけでも結構印象が違って聴こえる気がする。


ただそれだけで終わる優等生的なバンドでもなかったようで、遊びもいくつか。まずヒカシューは他のバンドと明らかに違う、コミカルと狂気が綯交ぜになった国産ならではのクセが包んでも隠し切れず、さすがヒカシュー強敵やな…という感想に落ち着きます。続いてのブリちゃんはほとんど原曲の面影なし、バンドサウンドによる再構築でほぼ完全にリリーズの曲と化しておりますが、やはりサビに入るとメロディがキュートで奇妙な味わい。しかしコレはコレでクセになりそうな格好良さです。 Suicide は一瞬コピー?かと思うもダビーな編集がさらに拡張されてアシッド感2割増し。これ結構パンキッシュな曲だと思ってたんだけど今回はこういう解釈かーと。


まーとにもかくにも聴いてて思うのは 「売れそうにないなー」 てことですよね。この手のバンドへのリスペクトを公言してる人でまともに売れてる人って POLYSICS くらいしか思いつかない。他だとロマンポルシェ。とか GOATBED になっちゃうから惨々たるものです。かくいう俺も好きなんですけどね。やっぱりニューウェーブって業ですよ。


京都出身の3人組による初のカヴァーアルバム。


Rating: 7.3/10