Alice Nine 「9」

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由緒正しき La’cryma Christi の血筋がこちらになります。


それはヴォーカルの声質が明らかに TAKA を意識してるだろうというだけではなしに。プログレッシブとも言える壮大かつテクニカルなアレンジを確かな演奏力でこなして見せるなど、ラクリマの影響力大だけども単なるフォロワーには納まらない、高いポテンシャルを持ったバンドであるということを前作 「GEMINI」 ではひしひしと感じさせてくれました。そして今作もしかり。


オープナー 「Heavenly Tale」 ではますますプログレに接近した絢爛なアレンジと大らかなスケール、何処となくオリエンタルな風味を感じさせる作風で不思議な心地良さ。これ4分程度でフェードアウトしてしまいますが、きっとライブでは巧みなアンサンブルの鬩ぎ合いがフルの尺で展開されるのでしょう。それを考えただけでちょっと興奮してしまう。しかしそれ以降はプログレではなく、むしろ HR/HM をベースに敷いたサウンドが主体となり、 「the Arc」 「GALLOWS」 では重心低く構えたアグレッシブなサウンドが刺激的に迫ってきます。ただ他によくあるモダンなメタルコア路線ではなく、比較的オーセンティックなメタルのエッセンスを掛け合わせており、無闇に音を重くせずメロディの爽快感を演奏のパワーで無理なく押し上げた、飲み口しっかり後味すっきりな仕上がり。なのでその後のミドルバラード 「花霞」 「虹の雪」 などに入っても落差が少なくスムーズな流れとなっているのですね。


以前先行シングルをチラ聴きした段階では何だかまたオーソドックスな V-ROCK に回帰していて、悪くはないけど少々肩透かしな印象を抱いていたのですけど、実際に蓋を開けてみればアルバム曲は本気モードだったりして、ひょっとして彼らはその辺の 「表」 と 「裏」 を意識的に区別しているのかなーと。せっかくなら表向きにもやんちゃしてしまっても良いのでは?と思わなくもないけど、アルバムの中にその表と裏が混在しても違和感を感じさせないのも彼らの手腕なのでしょう。全体的には手堅くちょうど良いサイズに纏められた感があり、順当な一手という感じですね。もはや安定感すらある。


1年ぶりとなるフルレンス5作目。


Rating: 7.8/10