茅原実里 「D-Formation」

D-Formation

D-Formation


今年の目玉もう一発いくぞおりゃー!


今までの作品も大概でしたが、まだ曲調に幅を持たせて緩急つけてるぶんマシだったと思います。今回は本当のフルボッコ。ヴィジュアル面では近未来サイバーなモチーフを2012年において有効な形にブラッシュアップしておりますが、楽曲においてもそのイメージにそぐう高速硬質ガチアゲトランス。もはやそれ以外には有り得ないとしてほとんど完全に的を絞った、ある意味振り切れた内容になっています。 J-POP の黄金律を大胆に踏襲し、熱線のごときシンセ/ビートがこれでもかとばかりに詰め込まれ、圧倒的な質量でゴリ押すハイテンション・ナンバーの応酬。


特に耳を惹いたものとしては、なんかもうヤケクソに近い陽気さの 「Planet patrol」 、そこはかとなく幽玄な奥行きのある空気感がある 「この世界のモノでこの世界の者でない」 、狂おしく鳴り響くストリングスと今作中最も速い BPMコントラストが強烈な 「暁月夜」 あたり。そういった色味のグラデーション的な変化はあるものの、やはりバキバキのアタック感をまるで緩めようとしない4つ打ちキックが通底していて、何だか鈍器で頭をガンガン殴られてるような錯覚に陥り、それはやがて恍惚へ至る…。ただポエトリーリーディング主体の 「X-DAY」 はさすがにちょっと冷めるというか、えらくステレオタイプ中二病設定が語りによってハッキリ認識させられて、ちとキツい。


それと、やはり個人的には前作 「Sing All Love」 がデビュー以来の方向性を突き詰めて質、量、幅、インパクトいずれもピーク値に近く押し上げた充実作だったと思うのですね。そこからさらに先へ踏み出るための一手としては、今回のはちょっと弱い気がする。もちろんこれ単体で聴けばゲップが出るほど過剰だし、こちらが打ち負けて笑ってしまうくらい楽曲の強度は高いのですけども、この手のサイバートランスは今までにもずっと試みてきた手段だし、どうせならもっとダンスプロパーにしてしまうか、ノンストップミックスにしてしまうなど (怖えー) もう一つチャレンジが欲しかったなーとも思う。


んで終盤に入り、唯一のミドル曲 「夢のmirage」 と唯一のバンドサウンドFreedom Dreamer」 に辿りついた時にはもはや安堵の心地なのですが、これだけデジタルサウンド一辺倒で攻められ続けると、人間の血が通った曲でこんなに安堵できるんですね人って。前だと 「書きかけのDestiny」 「Perfect energy」 などにあたる路線。ああいう溌剌とした躍動感をアンコールラスト的な位置づけでラストに持ってくるのはニクい。なんて言うか、アンドロイドに人間の心が宿って嬉しい悲しいという感情を知る云々っていうストーリーよくあるじゃないですか。あんな感じのカタルシス


2年ぶりとなる4作目。


Rating: 6.9/10