堀江由衣 「秘密」

秘密

秘密


フレーフレーほっちゃん!フレーフレーほ、ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!


数年前だったら俺、 Kawaii 過積載なアニメ声すぎるというところでこの人の声も受け入れられなかったと思うのですよ。しかし人間やればできるものでして、ここ数年声優ポップスをちょくちょく聴いてきた成果が実り、見事克服することができて今ではむしろ好物の範疇です。慣れって恐ろしい…とは言いつつも上には上がいるものなのでまだ油断は禁物ですがね。


それで今作。堀江さんの作品を本腰入れて聴くのはこれが初めてなんですが、いやはやなんともウェルメイド。様々な作家を招いてヴァラエティに富んだ曲調を揃えつつ、一定の抑揚と程良い味付けでとっ散らからずにまとめられたポップス・デパートストア。清冽な疾走感が心地良い 「True truly love」 「PRESENTER」 、モロに Perfume を意識したピコピコテクノポップ 「Coloring」 、軽快なロックンロールナンバー 「YAHHO!!」 などなどあり。いずれも方向性は違えど彼女の清涼感溢れるヴォーカルを素直に立てた聴きやすい仕上がりですが、せっかく声優ポップスという禁じ手なしのジャンルに身を置いてるんだから、ということで羽目を外した怪曲も。


その怪曲の主犯は清竜人。えーこの人こんな作風だったっけ?と己の記憶を疑わずにはいられない 「インモラリスト」 と 「CHILDISH♥LOVE♥WORLD」 。前者は重厚なストリングス/コーラスをふんだんに織り交ぜ、随所に語りやら変拍子やらも入ったひとりミュージカルとでも言うべき曲調で、なんせタイトルがインモラリストだから歌詞も少々思わせぶりでカゲキ。後者は運動会みたいな忙しないドタバタ賑やかさで冒頭のような応援がドーンと。これライブでは涙が出るくらい野太くなるんだろうな。またシリアスでヘヴィなムードが異色な 「MISSION」 、ギターが抜けて 80's ニューウェーブ色が増したオリエンタル・ポップ 「DEAR FUTURE」 と、これらの楽曲が集中した中盤は思わず唸るほどの濃厚さ。


そして今回はタイトル通り 「秘密」 がテーマということで、そこかしこに散りばめられた秘密というターム、そこから広がるイメージはもちろんミステリアスなものであり、破ってはいけない (故に破る) スリルと表裏一体に在るものであり、青春を甘酸っぱく彩る必須ファクターのひとつでもありますよね。今作はその辺の 「秘密」 を過不足なく網羅しており、もはやケチくさい秘密しか残らなくなった三十路手前の我が身としては、このコンセプトは自分を何故だか少しばかりノスタルジックで和やかな気分にさせてくれるのです。さすがは17歳教団員。


2年7ヶ月ぶりとなる8作目。


Rating: 7.9/10