Psysalia Psysalis Psyche 「#7」

#7

#7


衝動の取り扱い方について。


そりゃロック好きとしては勢いがあってやかましくて楽しいのが一番なんですけど、その原動/衝動となるものの扱いをひとつ間違えただけで、ひどく単調であったり、ありきたり、つまらないものになってしまう。ある種のインテリジェンスとでも言うべきセンスが大事であり、知性と衝動のどちらに傾きすぎてもいけないバランスが肝心。その辺を本当に上手く演れてるバンドは僅か一握りですが、今回初めて聴いたこのバンドはその一握りでした。


音的には Arctic MonkeysThe Strokes の影響下にある、ポストパンクを再吸収して刺々しくドライな音に鍛錬されたロックンロール。非常にゼロ年代らしいと言えますが、決して猿真似には留まらない彼ら独自のキナ臭いムードがここには蔓延しています。メンバー総出によるコーラスの掛け合いなどのユーモラスなアイディア、それと拮抗するように全体を覆う不穏な緊張感とダークネス。これらは統合された結果、不敵な笑みを浮かべたままナイフをギラつかせて振り回すような、奇妙なアクの強さ、スリリングな魅力に転じています。オープナー 「21st Century Massacre」 の時点でその狙いは明確。研ぎ澄まされたギターと忙しなくノイジーに暴れるドラムス、低熱の語りとクールなアジテート、それら全てがひどく鋭利なアグレッションを持って迫ってくる。ポストパンク/ニューウェーブ発祥である70〜80年代の毒気を継承し、それをロックンロールのフィジカルな刺激に盛り込んだ劇薬サウンド。力一杯やさぐれて声を荒げるヴォーカルもふてぶてしさ満載であります。続く 「Lemon Pop」 「My Dinosaur」 ではついでにもう1、2本ブチ切れ。やけっぱちでありつつクレバー、そして程良く青い。


そしてアルバム後半では荒々しさよりもメロウな部分が顕在化。胡散臭さ全開のラテンダンスナンバー 「2.5D」 、枯れた哀愁や無常感を纏って疾走する 「X is to Y as Y is to Z」 、ファンキーなグルーヴとミステリアスな雰囲気、実験的な音の配置で翻弄する 「Tokyo + Lolita」 など、抑揚控えめな中にも何気ないフックを忍ばせ、よりディープな色味を醸し出すという、攻め一辺倒ではない懐の深さをアピールしています。


しかしながら良い意味で、なかなかにクソッタレであります。所謂同時代性を内包しつつ、それに対する冷静な視点があり、茶化しては挑戦的に構える。枠を知った上で枠からはみ出ようとする。そんな小賢しいとも言える斜に構えた姿勢と、ささくれ立った荒さとを同時に融合してドライブさせられるのは若手の特権という感じで、ロックとして鮮度が高く、これからにも期待を抱かせるに十分。ロックンロールリバイバルブームを通過したバンドの中では一歩抜き出た存在ではないでしょうか。


2005年結成の5人組による、2年2ヶ月ぶりのフルレンス2作目。


Rating: 8.5/10