Rodrigo y Gabriela and C.U.B.A. 「Area 52」

Area 52

Area 52

  • アーティスト: Rodrigo y Gabriela,Samuel Formell Alfonso,Ariel Sarduy Mena,Carlota Teresa Polledo Noriega,Edouardo J. Sandoval Ferrer,Irving Roberto Frontelo Rico,John Tempesta,Rene Suarez Zapata,Lazaro A. Oviedo Dilou,Alex Wilson,Carles Benavent,Cesar Alejandro Lopez Martinez,Feliciano Arango Noa,Jorge Leliebre Sorzano,Juan Kemell Barrera Toledo,Otto Santana Selis,Peter Asher
  • 出版社/メーカー: Ato Records
  • 発売日: 2012/01/24
  • メディア: CD
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今年の冬は厳しい寒さなので、こんな熱さが必要です。


内容は全て既発曲のリメイクとなっていますが、名義通りキューバのビッグバンドの加勢を得た楽曲は、モノによってはほとんど別物と言って良い状態にまで変貌しています。ホーンセクションの高らかな響き、狂おしくも麗しいピアノの音色、ボトムをより強固に支えてスケール感を押し広げるリズム隊。騒いで止まないラテンの血が赴くままに、とことんゴージャスに、とことん情熱的に。 「Santo Dominigo」 「Juan Loco」 では刹那的に燃えて散る炎のようなパッションが咲き乱れ、 「Hanuman」 「Tamacun」 などはエレキギターソロやツーバスも導入して彼らのルーツの一つである HR/HM 色濃厚…と思ったらドラムスに参加しているのは Testament や Exodus といったバンドを渡り歩いてきた人らしい。通りで。その一方でボッサ的流麗さが強調された 「Ixtapa」 はワールドミュージックとしての強みを打ち出していたり、ジャジーなピアノと遠いエレキギターの響きがさらなる奥行きを与える 「11:11」 では新種のプログレのような趣も。


そういったバックの賑やかさの中でも、やはりロドガブ本隊の超絶ギタープレイは健在。ストロークやボディを打ち鳴らしてうねるようなグルーヴの波を作り、スリリングな速弾きがさらに血を沸騰させてくれる。コラボ作ということで若干主張控えめな部分もあるものの、2人のみのパーカッシブなフレーズの掛け合いに入るパートなどはやはり興奮しますね。


ただ、今までのロドガブが凄かったのって 「たった2人」 という制約が前程としてあったからこそというのも大きいわけで。ギター奏法の秘めるポテンシャルを最大限にまで引き出し、たった2人にも拘らず情感に満ちたメロディ、躍動的なグルーヴ感、ロックの持ち得るダイナミズム、独自の世界観までも描き切ってしまったというのは、きっとこの2人でなくては出来ないことだし、そこから減員しても増員してもこの凄みは出せないと思う。今回のコラボはロドガブにとっても刺激になったであろうし、企画としては決して失敗ではありません。ただ想定の内。物理的にゴージャスにはなったけども、ワールドミュージックとしては割とオーソドックスな形態であるし、意外な側面や驚きとまではいかなかったかなと。


メキシコ出身の男女ギターデュオによる、2年4ヶ月ぶりの新作。


Rating: 6.8/10